朝から誰かが小宇宙通信。あんまりにも煩いもんだから目が覚めちまって、いらいらしながら部屋の扉を開けると黒山羊さんが真剣な顔して仁王立ちしてました。わぉ、怖ッ。
「んだよ朝っぱらから。台所でも焦がしたか?」
「…いや、あの…アイオロスが…」
「何、またあのお騒がせ筋肉なんかしてきたの」
黒山羊さんがあまりにもどす黒いオーラを醸し出してるもんだから、優しい俺様はそこで詮索をやめました。どうせロクなことじゃないということも大体想像がつきます。
「…わかった、勝手にそのへん居とけ。朝飯振る舞ってやる」
いやはや、久しぶりに二人分の朝食です。最近は任務とか任務とか任務とかで黒山羊さんはおろか、お魚さんともあまり会っていません。この間良い酒が入ったので、今晩あたり誘おうかと思います。また愚痴大会でも始まりそうです。
「おい何ボーっとしてんだ。コーヒーぐらい自分でいれやがれ」
「ああ、わかった」
「右端の扉の三段目だ、間違えんなよ。あとカップはステンレス使え」
今更ながら、なんで俺はこんなに黒山羊さんの面倒を見ているのでしょう。黒山羊さんももう立派な大人なのに。なんだか嬉しくともなんともない状況なので、全てはあのお騒がせ鉢巻筋肉のせいってことにしておきましょう。





蟹さんと黒山羊さん つー






続いた…。このふたりかわいいよなぁ…
でも私的に、このふたりだけだと前に進む力が足りない気がします。推進力はきっとアフロが持ってるんじゃないかな。デスマスクは多分、調整力というか、アフロとシュラじゃあ統率ができない。で、シュラは調和。デスマスクとアフロだけじゃあぎすぎすする。
三人居ての年中組、という図が好きです。









「もう我慢ならん!カノン、いい加減にしろ!」
お気に入りのソファーから勢い良く立ち上がるサガに、カノンは驚きを隠せなかった。サガは拳を小刻みに震わせ、何とも言い難い悲しそうな表情を浮かべている。
「い、いきなりどうしたんだサガ」
「どうしたもこうしたも……お前は何故いつもそうなのだ!」
サガが滅茶苦茶怒っていることはよくわかる。その怒りの矛先が自分なのもよくわかる。
俺何か変なことしたか?今し方、玄関からこの部屋に入ってきたばかりなんだが。
「食事の前にいただきますを言わない、食べた後でごちそうさまを言わない!朝起きておはようと言うのはいつも私の方からだし、夜は大抵おやすみを言う前に爆睡している!今だってそうだ!帰ってきたのならただいまぐらい言え!私のおかえりの声が聞こえなかったか!」
…ああ、何にそんなキレたのかはよーくわかった。サガは礼儀とかに煩いから、面倒くさがって簡単な挨拶もロクにしないカノンが気に食わないに違いない。しかし目くじら立ててまで怒る内容でもないだろう。そう思って少々むっとするが、これ以上煽ると千日戦争を起こしかねないので、此処はとりあえず下手に出ておく。
「わかった、悪かったよ兄さん。次からはちゃんと言うから」
「次からはじゃない。今言いなさい」
「……ただいま」
眉間に皺を寄せながら小さい声でそう口にすると、サガは嬉しそうに微笑みカノンの元まで歩いてきた。
「ああ、おかえりカノン」
もしかしてそれがちゃんと言いたかっただけか、とその瞬間に気付き無性に腹が立ったが、サガがあまりにも嬉しそうなので何かもういいか、という気分になった。まだ明るい時分のことである。





兄さんと俺






カノンはおかえりだけはちゃんと言いそうですね。
てかもう題名つけるのめんどくさくなってるの丸分かりですねこれ。









まだ小さい背中からは子供らしい、高い体温が伝わる。いつもはすたすたと自分を置いていく足が辿々しい。いつもは強く大きく見えるこの背中が急に頼りなく思えたが、全身に力が入らなくて此処しか頼りになる場所がない。
辿々しくても真っ直ぐ歩いている。息が上がってまともに喋れもしないのに、諦めようとは思わないらしい。
「…サガ」
「カノン、だい、じょうぶ、だ。もう、すぐ、だから、な?」
振り落としていいよ。置いていっていいよ。そう口にしようとしたのに、途切れ途切れながらも優しげなサガの言葉で喉の奥へとしまい込んでしまった。
何でサガは頑張るんだろう。何で俺は頑張らないんだろう。息が上がってるわけでもないのに、たった一言、その小さな背中に告げることすらできず、カノンは静かに泣いた。サガに気付かれないように泣いた。後にも先にもカノンがサガの背中に負ぶさったのはこの時だけである。




背側の思い出





あれ、双子が続いてますね…『ここにはひとつの太陽』繋がりで。
サガはやっぱり普通にできた人間だと思うのです。確かに面倒くさい人格ではありますが。ブラコンではなくて、普通に人間ができてるっていう。
カノンは何一つ自分からは切り離せない人間ですよね。多分、元から持ってるものの少なさ故だと思いますが。結局そういうとこが全て裏目に出るような。









時々、思うことがある。何も悪いことはないんじゃないのかと。確かに不自由な体で、確かに面倒な頭だけども、これでも俺はきっと、昔ほど俺が嫌いじゃあなくて。今の環境だって、存在そのものを否定されてたときに比べれば随分な待遇になったもんだと思う。そのときに比べて自分が変わったのかと云われたらそれはちょっと答えかねるが、昔のことを笑い話にできるようになっただけで大きな進歩で。
だのに何もかもいまいち上手くいかないのは、まぁ俺のいい加減な態度の所為にすれば納得がいかないこともない。他人は他人で自分は自分、同じものを見ていても見えてるものが違うのは当然だろう。だからその辺の行き違いなんて仕方ないで済ませばいい。
俺の命は今ようやく俺のもので。元々人間みんな自分の命は自分のもので。大事なものもようやく両手に数えるほどできたから。生まれたときから立っていた場所に今も立つ。『らしい』と言えば『らしい』位置、大体誰かの半歩後ろぐらい。そこから見えてるものは多分俺にしか見えないのだろうがそれでいい。アテナが教えてくれたのは、きっとそういうことだったからだ。
そして今、あの頃見えていたものとまるで違うものが見えるというだけで、俺はきっと、悪くはないよなぁ、と思っている。…むしろそれは『良いこと』なんじゃなかろうか。





あいについて






カノンです。

夢とか希望とかいらん、と常々云うのは、多分そんなものよりずっと素敵な充足感があるからだ。…とかいう感覚が抜けないままかきました。
でも近しい人たちについては、夢とか希望とか言っていて欲しいと思います。だってそれはやっぱり、幸せなことなのではないだろうか。









こどもなのだよ。おおきなこえで、あれがほしい、これがほしい、ひとりはいやだ、いっしょにいてくれ。わがままをこらえきれずにあれもこれもとほしいものばかりをくちにして、なく。こどもなのだよ。
かれはね、そしてきみもね。
こどもなのだよ。ほしいものをほしいといえず、ただひくつになるだけみけんにしわをよせている。いいたいことがいえないから、いわなければならないこともくちにできない。こどもなのだよ。

おとなになりなよ。ぐっ、とがまんするなんてしなくてもじぶんからがまんぐらいできるようにね。もうまわりはみんな、おとなになるのだよ。なかずにはいられないこどもも、なけないこどもも。


あまえてばかりだったのだね。
だけどあまやかしたことあったかい?
あまやかしてばかりだったのだね。
だけどあまえたことあったかい?
そうそう、おとなにならなきゃね。
そしたらきっと、もっとずっと、そのばしょはあたたかくてきれいにみえるはずなのさ。





めをあけて





ノーコメント









褒美をやろう、というのが奴の口癖だった。覚えておきたくもないのによく覚えている。偉そうに教皇の玉座でふんぞり返りながら、その僅かに高い場所から俺を見下ろすのだ。

思い返せば何故、俺はあれに頭を垂れていたのかと疑問に思う瞬間もある。しかしそれは間違いなく俺があの時最善だと思ってとった道だった。あれを信じていたわけではない。そうする他に術はなく、またそうすることそのものを信じていた。


今でも思い出せる、あの傲慢に満ちた強い声を。褒美をやろう、というのが奴の口癖だった。しかしあれは酷い思い上がりに違いなかった。だから、いつも返事はノーだった。



アンタが俺の欲しいものを与えてくれるとは、露ほども思ってないんでね。

へらりと笑っていってやれば、あれは高い玉座から降りて俺の腹を蹴り飛ばすのだ。





薄暗きこころ






サ蟹が気になります。でも私的にカプじゃなくてバイオレンス。しかも黒サ蟹。もし白なんだったら普通に同志的な感じでいいです。









サガが最近になってようやく気付いたことがある。
カノンの体のどこかには、必ず噛み傷がある。


サガも仕事で忙しければ、カノンも基本的に多忙だ。じっと机の前から動かず常に手を動かしているのと、休む間もなくあちこち飛び回っているのと大きな違いはあるが、どちらも忙しいのに変わりはない。

だから、サガは久しぶりに双児宮で、久しぶりにカノンを見て、はじめてその噛み傷に気付いた。
「カノン、その腕はどうした?」
そう、最初に見たのは右腕だった。そこまで深い傷ではなかったが、歯形が綺麗についていたのである。
「ああ、猫に噛まれた」
カノンはだるそうにそう答えた。



しばらく経ったある日のときは、
「カノン、首筋から背中にかけて凄い傷がついているぞ。何かあったのか?」
と、かなり心配して尋ねた。それは前のように決して浅い傷ではなかった。血が滲んだ跡まで見える。
「ん?ああ、油断してたら噛みつかれた」
「また猫にか?」
「いや」
じゃあ何に?と尋ねる前に、カノンは部屋を出ていってしまった。

ひとり残されたサガは、ただただ首を捻るのみである。




猛獣注意



よく噛まれます。
…でも噛まれるって相当痛いよなぁ…自分で噛むだけで結構な歯形つきますもんね…しかもそれでも本気じゃないですもんね…試した前科があります。あいたー









半歩後ろから、カミュを追いかけていくミロの背中をみる。自分はそのまま踵を返し、今日の任務へと速やかに取り掛かる。


カノンは今まで、カミュと居るときのミロの何ともいえない幸せそうな表情を、まともに見たことはない。カミュを見つけたミロは必ずカノンに背を向けるというのもあるが、カノンは意図的に、カミュがいるときはミロの側から離れるようにしていた。
今更そんな態度の自分を詰りも嘆きもしかし肯定もしないのは、当然といえば当然であった。端的にいえば勇気がなかった。あの光を見上げるような勇気さえ持ち合わせられなかった。


この感覚はあの時のものに似ている。幼い頃、いつも半歩後ろで見ていたサガの背中。あれに似ている。だからなのだろうか。この位置を詰りも嘆きも肯定もしないが、此処は自分に酷く似合いな気がした。




背側の憂鬱




そういって微妙にサガのこともミロのことも見ない振りするカノンとか。

こんなんばっかかいてますが、海将軍筆頭としてばりばり男臭く動き回ってウワーッハハハ!とか云ってるカノンも大好きです。

つまり奴は場所と相手によってものの見事に性格や態度が変わるんですね。きっと









ずっと一緒にいてくれるか、カミュ。ミロがそう言えば、カミュはいつも力強く頷いて、ああ勿論だミロ、約束しよう。そう言って抱き締めてくれるのだ。だからミロは調子に乗って、ずっと愛してくれるかなど、ずっと親友かなど、ここぞとばかりに打ち出して、その一つ一つにしっかりと返事をするカミュに安心をする。

だがそんな中守られた約束は、本当を云うとひとつふたつだけだ。カミュが酷い嘘つきだということではない。カミュの言葉に偽りはない。カミュはいつだって本気だった。だが約束はいつも果たされない。こんな、心を満たすための約束だけではなく、素朴で簡単で些細なものでさえ、カミュは守れない。食事をする約束、映画を見に行く約束、ただ会おうという約束。その悉くをミロは反故にされてきた。


けれどもミロは、カミュとの約束を破ろうとは決して思わなかった。どうせ今回も駄目になるのだ、と諦めたりはしなかった。カミュが破ろうと思って破ったわけではないことを知っている。ミロは、例え何があってもカミュを信じるのだ、と常に自分に言い聞かせてきた。


辛いことなど山ほどある。苦しさに声をあげることなど一度や二度の話ではない。悲しみはどこにいてもやってくるし、怒りは意思とは無関係に沸き上がる。それでも信じることに意味がある。守られない約束を積み上げて、ミロは待つ。そしてきっと、待ちくたびれる。





約束の数






信じてる間に先にしんでる我が師。









「さて……」
テーブルの上に並ぶは特製イタリア料理。グラスはみっつ、酒は安酒だが味はまぁまぁのものが幾つか。時刻は夜の九時を回った。ちょっと遅めのディナータイムだ。
今すぐにでも、恒例の晩餐会を始められる状態なのだが、椅子に座り、テーブルに肘をつき、三人は同時に溜め息を吐いた。
「……さて」
「……ああ」
「……だな」
特に意味を持たない二文字の会話が為される。
三人揃って遠い目をした。
「…とりあえず飯だけでも食わねえ?」
昼から何も口にしていないから、当然三人とも滅茶苦茶腹が空いていた。容易く同意してスプーンを持つ。
何の躊躇いもなく安酒の栓を抜いて、並んだみっつのグラスになみなみと注いだ。喉の渇きも半端ない。何の躊躇いもなく三人同時に一杯目を飲み干したが、口から放した途端、再び漏れる深い溜め息。流れる沈黙。



詰まるところ、今日はネタ切れだ。さて何をツマミにして酒を煽ろうか。そんなことに本気になれる今が、拍子抜けするほど愛おしい。





ア リトルハッピーライフ






年中組。三人で自分達の外部のことをあれこれ議論する彼らが好きです。今日はネタ切れですが。

てか題名(ry)