段ボール





味気ない、素っ気ない、気品もないし魅力など何一つない。そういってサガはひとり機嫌を損ねている。アイオロスの目の前には並ぶ茶色い箱の列。


「運ぶときに楽だから、最近はこれを使うと聞いたぞ」
あとは多分、運送会社の心遣い。一気にまとめて運ぶのだから、綺麗な包装をしていても途中で汚れてしまうかもしれない。
「それでもだ。女神からの承り物をこんな箱に入れてしまうのは」

神話の時代からそのまま持ってきたような聖域の風景には、確かに違和感のあるものだろう。それもまた一興…という風には考えられないか、サガだしな、とアイオロスはひとり納得してしまう。


「開けてみるか、サガ。今日は何が入っているかなぁ」
この間はアメリカの方からの土産だった。そういえばあまり縁がないよな、と二人で話していたことを思い出す。一週間ほど前のことだ。
「御公務でお忙しいであろうに…女神に大変申し訳ない」
「ははは、そこは大丈夫だろう。あの方は楽しんで選んでおられるよ、絶対」
「お前の“絶対”は信用ならん。そういって絶対だったことなど、幾つあった」
「なら女神を信用するといい」



アイオロスは箱の前にしゃがみ込んだ。テープで頑丈に固められた蓋の面には紙が貼り付けられており、中身の概要が記載されている。『割れ物』の文字を見つけて少し首を捻った。とにかく、と思いテープを剥がしにかかる。

「もう少し丁寧に開けられないのか」
びりびりと音をたてる箱にサガが眉を顰めた。
「大丈夫大丈夫。だってこれは味気ない、素っ気ない、気品もなければ魅力もない、ただの箱だろ?」







中から出てきたのはたいそう立派な焼き物だった。形からしてコップだろうか。描かれている文字から日本のもののようだという見当はつく。律儀に黄金聖闘士全員分あるそれをサガにも見せ付けて、アイオロスは嬉しそうに笑っていた。