階段



階段は最大の敵だった。未発達の小さな体では、上るのも下るのも一苦労である。それに反して、兄始め既にある程度の成長を終えたものたちは、階段に悪戦苦闘する小さな体の隣を悠然と上っていく。



アイオリアは悔しかった。毎日階段を見つめて、何とか兄たちのようにこの階段を悠々と上れないものかと本気で考えた。一番上まで上って、また下がる。繰り返し。

だのにしんどくなっていくだけで、一向にこの階段に勝てる気がしないのだ。とうとう悔しさが頂点に達し、怒りすら覚えたその時、階段の一番上から足を滑らせた。






「……!」
「ああ、危なかった」






真っ逆様に階段の一番下まで落ちていくかに思われた体は、中段のところでやんわりと止められた。
「駄目だぞリア、上手くいかないからって飛んじゃあ」
耳元で、優しい兄の声がする。違う、足を滑らせただけなのだと弁解したかったが、もしかしたら足を滑らせなくても放っておけば自分は飛んだかもしれない、と思った。



…飛んだところでまだ上手く着地もできないだろうに。