照明





「電球が切れたって?」

昼間の執務室で、脚立を持ち出す雑兵に下からあがってきたばかりのアイオロスが尋ねる。はい、なので付け替えろとシオン様からの通達が。丁寧に返事がかえってきた。




部屋では、今日もサガが生真面目に机に向かって書類とにらめっこしている。

脚立に上った彼の作業をアイオロスは何となくぼんやり見ていた。よく考えたら、これがないと夜なんて真っ暗なんだよなぁ。ロウソクとか松明とか、まぁ各自宮の通り道なんかは全部火なわけだが、燃えるものが近くにあるときに火が明かりじゃあ、おちおち居眠りもしていられない。

なんて、考えていたらサガに睨まれていた。
「見ていないで仕事をしろアイオロス」
「ごめんごめん」
「ごめんは一回で十分だ」
頭を掻いて謝りながら、もう一度取り外し取り付けられる電球を眺めてみた。新しいそれは取り付けられた瞬間、昼間には不要なほど眩しく光り出した。




夜を照らす光は確かに有難いが。

別に夜までわざわざ起きていなくてもいいんじゃないか、だからあんな電球も、別に要らないんじゃないか。書類を少しずつ捌きながら、独り言のようにアイオロスは呟いた。サガは答えない。目もくれずに黙々と、アイオロスの倍のスピードで書類を捌き続けている。
「星の光も消しちゃうしさ」
最後にそれだけぽつりとこぼして、アイオロスも黙った。あまり意味のない行為だった。思い知るよりも納得のままに、今日も日が傾いていくのを眺める。