街角





今日はそれとこれと、あとあれも添えておくかと頭の中で献立を描く。食材選びから気を抜かないのが、自称でも真の料理人である。目利きもある方だと思う。値段が妥当じゃなければ値切りも当然だ。別に誰が気にするわけでなくとも、やはりこだわりたいのが男の性だろう。







だらしなく買い物袋を引っさげ、欠伸しながら坂道を下る。平日の昼間だからか人もまばらで、視界は良好、渋滞もなし。実に爽快な気分だった。たった24時間だが貴重な休日に相応しい天気でもあった。さてこの後の時間はいったいどうやって過ごすか、あれこれ思考を巡らし予定をみっちり頭の中に詰め込みながら、角を曲がろうとした。



「あ」
「あ?」
「…あ」



ぐるり三つの路が交わる一地点。それぞれ三方向から現れる三つの見知った顔。足は止まり、爽快な気分は急速に落ちた。全く同じ現象が他ふたりにも出ている。

そんなまさか、示し合わせていたわけでもあるまいに。そんなドラマや映画みたいな話が。



…あってしまった今、何を言ってももうただのわめき声か。



「…なんだよお前らも一日休暇か?」
「馬鹿言え、私は昨晩から今朝がたまでちゃんと仕事だった。シュラは知らんがな」
「…いや、俺は半日休暇だ。さっき降りてきたばかりで」
「……」


このまま、はいさよならできないほど気まずい関係は築いていないが、それを実践するには余計な時間を過ごしてしまったようだ。三竦みのように互いの渋い顔を見て立ち止まり、その場から誰も動こうとはしない。

呆れも出る。


「……」
さて今日の予定はまたも保留だ。ため息ひとつでそれを悟ってしまう三人に、なってしまったことは幸か不幸か、ゆっくり三人同じ方向へ足を伸ばす。どこへ行くかはまだ決まらない。