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なんとなく、自分の役回りというのはこういうものなんだろうなぁ、ということを、アイオロスは知っていた。腹に致命傷を負いながらもしっかり腕に赤子を抱き、ゆっくり息を吐く。頭はやけに冷静だった。冷静でなければ、シュラを逃がすことも不可能だったろう。撒いたのではない、逃がしたのだ。冷静ついでに、次々と彼は考えた。










サガの鬱屈には薄々感付いていた。時折誰かに怒鳴り声をあげていたのも実は知っていた、サガに言ったことはなかったが。サガが教皇に成り代わっていたのならば、今教皇はどこにいらっしゃるのだろう。自問しながらも、答えはほとんど出ていた。今更サガに問い質すまでもない。

サガはこの赤子を、…女神を、殺そうとした。自分はそれを阻止したが、何故あの時とっさに逃げたのだろう。特にその時何かを考えていたわけではないと思うが、その答えも既に自分の中にあった。
異常な程アイオロスは冷静だった。全身の痛みと戦いながら、静かに落ち着きを払っていた。



サガ、と小さく呟いてみる。あの仮面の下、歪みきった表情。あれを目撃したあとでも、サガの神のような笑みをしっかりと思い出すことができた。ああ、黄金聖闘士になる前から、友人だと、戦友だと、そう思ってきたけれど。一体何処で間違えたのか。その答えすらやはり、既に出ていたのだ。
霞む視界の中、最初から全て上手くはいかないようになっていたということを、アイオロスはわかっていた。










ギリシャの神殿にて、女神も、射手座の聖衣も託し終わったアイオロスは、あと死を待つのみであった。冷たい石と頬を隣り合わせにして息を吐く。ひとつ心残りは、幼い弟に何も告げてやれなかったこと。自身の役回りを理解していても、結局事態は回避できない。ならば収束を、と人は言うのだろうが、アイオロスはサガから逃げたとき、自分は死ぬのだろうなと知っていた。だからこれはそう、体のいい自殺だった。


アイオロスは目を閉じた。ようやく全身の痛みから解放されそうだ。この先はもう、自分の役回りではない。願わくばシュラを、サガを、弟を、皆を、可哀想な彼らを、誰かが救ってくれることを。









スイサイドヒーロー



ロス兄考察のなれの果て
言いたいことが多すぎて収拾がつかなくなったのでまた色々リベンジしたいです