幼い頃、俺は当然のように、俺はサガがいなければ生きていけないのだ、と思っていた。
実際それには間違いなかった。外にほとんど出ることの叶わなかった俺は、独りで食い扶持を稼ぐ術を持たず、生活の全てをサガに依存していた。サガが正式に双子座の聖闘士になってからは、サガが家にいないことも多く、流石にそう頼ってばかりもいられぬと家事ぐらいは自分でやるようになったが、それはあくまでも『与えられた』上での生活であった。俺自身に独りで生き抜くだけの力は微塵もない。



引き換え、サガは独りで何でもできた。家事はそれ程得意というわけでもなかったが、サガは元来器用で大抵のことは少しやればできてしまう。俺を養っていたのはサガだったし、俺と違って外界に生きていたサガは、一般的な常識もしっかり持っていた。



だから俺は、『俺にはサガが必要だが、サガには俺が必要ではないのだ』、と思い始めるようになった。考えれば考えるほどその通りに思えて、何度も此処を出よう、此処を出ようと決意したが、そのたびに俺はサガがいなければ生きていけないことを思い出して諦めた。














しかし、13年間サガから離れて、俺はそれが間違いなのだと知った。俺を必要としていたのはサガの方だった。サガは、手先は器用だったが、精神的に酷く不器用だった。俺を養っているという強い自負で自分を守っていたサガは、俺がいなくなった途端に碌に食事も取らず、睡眠もそこそこになり、まともな生活ができなくなってしまったのだ。



かたや俺は、サガがいなくても問題なく生きていけてしまっていた。独りであることはもう慣れていたし、正体を隠すことも特別なことではなかった。俺はサガの真似をすることも知っていた。俺は、ひとりでも生きていけたのだ。











しかしこうして聖域で、再びサガと暮らすことになって、俺はそれも間違いだったということに気付いた。

海界で海龍をしていた頃の俺は馬鹿だった。ざまぁみろ!と心の中でずっとサガを嘲笑っていた。
だがサガは、俺がいないと生きていけないとしても、やはり完璧だった。サガをそんな風にしたのは、間違いなく俺だったのだ。俺が、甘えて自分からは何一つしようとせず、一切をサガに押し付けた。その所為だったのだ。




昔、『双子のもうひとりはいらない』のだと繰り返し言われたことを思い出す。『それは違う』と言えるだけのものを俺は、この二十八年間で見つけた筈なのに、俺は未だ何も言えずにいた。俺はやはり、と考えずにはいられないのである。




サガは、俺とまた暮らすことができて嬉しいという。サガは俺がいなければ生きていけない自分を知らないのだ。ましてや自分をそんな風にしたのは、俺だなんてことは。できればもう、このままずっと気付いてくれなければいい。俺はサガと共に生を受けた瞬間から、馬鹿で狡い奴だった。そして今も、それは大して変わっていない。









双子依存症



突然思いついてばばばとかいたので何がなんだか
ほんとにめんどくさい双子だなぁ・・・と思いつつやはりこいつらが愛しくて仕方ないなあと思うわけでして
皮肉を込めてね、いつもそうだね