理由を問うのも馬鹿馬鹿しい、自明のことだろう。迷う方が変なのだ。ミロは思う。足踏みの音ばかりする中心で信じている。

誰かの好きな部分を事細かにあげることに意味なんてない。してる暇があったら抱き付いて好きだと言ってやればいい。嫌われることを気にするから嫌われる。どうしようもない部分に目も瞑らせなくして、ようやく好きになるんだろう。生半可なものなら初めから要らないと大口を叩けば、その通りに何時だってやってきた。素直になるのでも優しくなるのでもない。何故、それがわからない!










サガは余計なことを気にしすぎなんだ。なんて、面と向かって言えたものではないが。背後に回って背中を押してやれば大体はわかる。サガ、サガもそうだろう。理由なんて語る必要もないだろう。何かを想うと、この喉の下が疼いて笑みも出る。
好きになるとそこが熱を持つだろう。いや、好きに限らなくったっていい。何かは此処に替えがたい声を生むから、幸せになれるから。


「なに、簡単だ。思いきり抱き締めてやればカノンだって何も言えまい!」
両手を広げた格好のままミロは屈託なく笑っていた。サガが困ったように言葉を濁して、いやでも、と言い訳を紡ぐ姿勢を作ると、間髪入れずに声をあげる。
「家族ではないか!」



そうだ、家族。思わず口からこぼした単語にミロは自分の喉を奥を鳴らした。



「何なら俺が協力してやるぞサガ!」
「協力?」
「俺がカノンを羽交い締めにしておくから、サガは存分に抱き締めてやればいい」
端で聞いていたシュラがほんの少し眉を動かし、デスマスクがでかい溜め息を吐いた。アフロディーテは声を押し殺して笑っている。
「カノンは私を拒絶しないだろうか」
「大丈夫だって」
カノンは全く素直ではないが、それでもちょっと傍目で見ていてわかるくらいにはサガの理解者でありたいのだとミロは知っているし、何より家族だ、何を遠慮することがあるのか。他人ではない、血を分け合った兄弟だろう。

その昔、ミロがどれだけ焦がれても、手に入らなかったたったひとつの小さな幸福。







「そうと決まればさっそく実行だ!」
元気に執務室を飛び出していくミロに、ゆっくりサガが後ろについて行く。おい仕事…と言いそびれて残された三人はサガにいってらっしゃいと手を振りながら、顔を見合わせてご愁傷さま、と呟いて笑った。


教皇宮にカノンの悲鳴があがるまで残りあと五分。








"Love" is the word I really need



…なんでかいたんですかね?疲れてたんだろうか…
ちなみに正式には、『"Love" is the word I really need because all the other word maens nothing to me』、ラッドのバイマイサイでした。