※色々えぐいです



















子供が生き物の死を理解するときというのは、物語のように劇的な瞬間では決してない。深く、染み入るように実感するものなのだ。それまでは幾ら死を目撃しても、周りの感情に流されるままに俯いてみたり泣いてみたりするだけで、子供が自発的に持つものはほとんどないに等しい。








かく言うミロも、そんな子供のひとりであった。彼にとって、『いなくなる』ことと『しぬ』ことは同義ではなかった。


(羽がもげた蝶はかっこわるいなぁ)


そうぼんやり思いながら、美しい蝶の足を一本一本丁寧に剥いでやったことも度々あった。
自分はこんな醜い蝶にはなるまい。幼い自尊心は既に体からはみ出していた。それを隠そうともせずさらけ出して、一方的に自分が相手を虐げるという行為に、一種の優越感すら感じていた。そこに善悪はない。否、初めは快感すらそこにはなかったのだ。



その一方で、ミロは子供の頃から非常に情に篤くもあった。天涯孤独の身ではあったが、家族同然に育ったものたちへの情は、理屈もなく真っ直ぐで、彼らの為に無償で体を張ることを何ら忌避することはなかった。

幼い彼に重要だったのは、命の尊さでも生きる価値でもなく、自分が如何にそれを愛しているかだった。

























ある時、地面に一際目立つ蟻の巣を見つけて、ミロは心躍った。蟻の巣を埋めるのは好きだった。帰る場所を無くしてうろうろする黒い物体は何と滑稽なのだとにやにやする。
しかしふと、ミロはもっと面白いことを思い付いてしまった。近くにあった木桶を引っ付かんで水を並々と注ぎ込む。そしてその大きな穴の上から少しずつ流し始めたのだ。



楽しかった。小さな水たまりに溺れて浮かぶ黒いそれが、あまりに気持ち悪くて。





木桶の水が全てなくなる前に、ミロの肩を優しく掴んだ手があった。ミロは木桶を傾けるのをやめてすぐさま振り返り、その表情を明るくさせた。


「サガ!」


半ば反射的にミロはサガに飛び付いた。手にしていた木桶が転がり、残っていた中の水がその場に広がる。
「ミロ」
サガはいつものように優しくミロの背を抱いたが、目線は水たまりへと注がれていた。
サガの表情は、少し険しい。
「サガ?」
もともと人の情に機敏なミロはすぐにサガの様子を察し、体を離して顔を見上げた。見られていることに気付いたサガはいつものように綺麗な笑顔をミロに向けたが、ミロはきょとんとしたままだ。
何か、悲しいことがあったのだ。
ミロがとっさにそう思った。それと同時にサガはミロの両肩をしっかり掴み、顔を覗き込むような形でその場に膝をついた。



「いいかミロ、これはしちゃいけないことだ」
ミロは瞬きを繰り返した。
「そうなのか?」
「ああ。だから、頼むからもうしないでくれ、お願いだ」



サガはそれ以上何も言わなかった。ミロはまだ不思議そうにサガを眺めていたが、あまりにもサガが悲しそうな目をするので何だかミロも悲しくなってきてしまい、思わず、ごめんなさい、と謝った。




退屈なときの暇つぶしを無くすのは少し惜しい気もしたが、サガがやめてくれというならやめようと思った。ミロはまだ、バッタとカマキリの区別もつかない子供だった。









晴れすぎた空



情に篤いってことは同じくらい排他的だと思う。ミロはサガに物凄い懐いてて、サガはミロに物凄い甘そうな気がしますが、それはひとえに二人共『身内愛』が強いからかなーとか。ちょっと思ったんでした。

私にも蟻を潰して楽しんでる時代がありました。でも私は楽しんでるというよりかは自虐行為に近かったように思います。もしかしたらカノンとかはどっちかっつーとそっちかもしれん

題名、つけてからそういうこっこの曲があったことを思い出しました。遅い