「カミュがシベリアに行ってしまったああああ!!」
カノンの穏やかな朝は、目覚めから三十分後のこの叫びによって壊された。
毎度毎度ご苦労様だと言いたくなるほど、ミロはカミュカミュカミュと口を開けばそれである。親友、よりもっと行き過ぎてしまった関係であるにも関わらず、基本的に性観念の乱れたミロにとってカミュはあくまで親友で、親友とはそういうものであるらしい。
だから何だ、って、カノンには至極どうでもいいことなのは、確かにそうだが。
「次の休みには買い出しに付き合うと言ったのに!!」
いつものことだろ?とは気軽に言えない。一度いって状況が悪化した前科が有る。
でもカミュがミロとの約束をほとんど守らないのは事実だ。わかっていながらミロは、毎回毎回カミュと約束を取り付ける。それはもう、馬鹿のひとつ覚えのように。言い換えれば、そうすることしか知らない動物のように。
いや、そんなことカノンには全くもって関係ない。関係なんてこれっぽっちもない、のだが。
ただ、そう。カノンはどれだけそれで安眠を妨げられても、それで何だかカミュの代わりみたいなことをする関係になっても、ミロが悪い奴じゃなくて、ただひたすらに親友であるカミュが好きでしょうがないのだと。或いは、カミュはミロなら必ず許してくれると信じて自分勝手な約束反古をするのを、わかっていて結局譲ってしまうミロの心情をなんとなく理解していて。
「残念だったな」
結局そう言って下手くそに慰めるだけになる。無碍にはできないし頼られたら悪い気はしない。詰まるところ、カノンはミロに甘かったわけなのだが、だが、何だというか。
親友ってこう、もっと違うんじゃないか、と思う瞬間もある。サガとアイオロスみたいな。でもあれもあんまり参考にはならないか。カノンは親友なんぞ持ったことがないので本当のところは全くわからない。
ミロがカミュを親友だといい、カミュはミロを愛しているといい、ミロはカミュが好きだといい、カミュがミロは親友だという。それは何故だか二人の間で儀式めいて存在し、全ての理屈を通り越して二人を繋ぎ合わせていた。
もう仕方ない。どうにもならないのだろう、あれは。再三いうがカノンには全く関係ないのだ、二人の間柄など。ただミロが拗ねて喚きにやってきたときに相手をしてやるだけ。これはあれだ、家出猫に餌をやってる感じだ。ほれ魚やるから、ぽーん。
そんなことしたらまたミロがここに来るだろうと。そんなことしたってカノンの猫になったりはしないのに。でも多分突き放すことはできないのだろうなぁ…カミュカミュと煩いミロに餌をやるのが半分、役目みたいなもんなんだろうと、カノンは最近思うことにした。腑に落ちないことばかりだが、メリットなんてひとつもないのだが。
眺める憂鬱
カミュミロをかかないのにカミュミロが沢山出てくるこの微妙な感じは一体何なんだろう…
攻め側の心情が色濃くて、受け側の心情がわからないという図はサスダテで散々やった感があったのですが、今でもその影響がびしびしある気がします。些事だけど、大したことないけど。口癖みたいですね。