夢を見た。悪い夢だ、あまりの悪さに自ずから目を覚ました。窓からまだ陽の光は差し込んでいない。
夢の中で俺は、聖衣を纏っていた。だだっ広い荒野にひとり立ち尽くし、辺りを見渡し、何かを待っていた。
何か、はわかっている。あれだ。黒光りする闘衣を纏い、ただ真っ直ぐ自分に向かってくるだろう、あれに違いない。
夢の中で俺は、あれが俺を殺しに来るのを待っていた。
必ず来るという確信はやがて夢の中で事実となる。案の定、夢の中でもあれは俺を探し当て、追いかけてきた。何の言葉も交わさずに、ただ高揚感だけを持って俺はあれを迎え撃った。
ぎりぎりのところで攻撃を避け続ける。夢だから、飛び散る血の臭いは全くなくてリアルさには欠けたが、それはもう仕方ないだろう。
そして夢の中は残酷だ。いや、元からこれは悪夢だったのだ。だから、良いようには働かない。そんなこと知っていた。知っていたが、その妙な決まり事に逆らえず、俺は、その首に手をかけた。
ああ、そうだ。
絶望感に目を覚ました。真っ先に見たのは、自分の指。夢の中であれの首を締め上げた感覚が、未だ残っているのに酷い吐き気がした。
戦いたい、命の奪い合いがしたいのだ。今の生温い日常を壊したいわけではなく、生温い関係を終わらせたいわけではなく。俺はただ、戦いたい。どちらかが倒れるその瞬間まで、俺はその高揚感を味わっていたい。
つまらない、と思った。あれではつまらないと思った。次に会ったときに伝えてやろう。俺はそんな終わりを望んではいないと。簡単には殺さない、だからお前も簡単には死ぬなよ。もし夢の通りになるようなことがあれば、俺は躊躇い無くこの指を折ろう。
…そう言ったらきっと驚愕の表情をして、馬鹿なことを言うなと返してくれる気がしていた。
暗中闘争劇
多分、BASARAの蒼紅みたいな感情なんだろうなぁと思いつつ、あれよりももっと大人で、発展性がない気がしました。
カノンからの方がどろどろ感が出るかなとか。