every30minute ログ 6
※やっぱり大した解説はないです
※☆矢にあまり関係のないものや語りはログにしてません
■ねえねえ(ロスリア兄弟)
「にいちゃん、どこいくの?」
決まってアイオリアの声が聞こえる。大体、自分からななめ右後ろ。振り返ればななめ左前。聖衣の箱を背負った自分を見れば、どこから見ていたのかいつもいつでもどんなときでもアイオリアはここに来る。
「んー?今日はちょっとイタリアの方に」
「いたりあ?」
「ここから海を挟んで西にあるんだ」
方位磁石は体の中にあった。だから迷わず西も指せた。けれども幼いアイオリアには西も東もない。この子にはここしかない。世界は、山と山の間にすべてひとつずつ存在すると思っている。まだ海も見たことはない。
「晩飯には間に合うように帰るさ」
「きをつけてねえ」
無邪気に手を振る弟が愛おしい。いってくる!と元気に歩き出せるのもその後押しがあるからだ。だけどいつも、歩き出すのは弟のためじゃない。自分は最低な兄貴だった。
2011/11/15 (Tue) 21:18
■ゆめ(ラダカノ)
なくしものをした。青くて綺麗な石だった。海岸を歩いていたときに見つけた。捕鯨船が沖から出ていくのを見送ろうとして駆けて、躓いた。忌々しげに睨んだ足下に転がっていた。青くて綺麗な石だった。他のどんなものよりも際立って輝いていたのに、今はどこを探しても見当たらない、見当たらない…
2011/11/18 (Fri) 20:25
■サンドイッチ(双子)
朝から珍しい光景を見た。歯ブラシを口にくわえながら、不覚にもカノンはかなり呆けた表情をその場に晒す。サガが、いつものあの法衣姿のまま台所に立っていた。手首まで垂れる服の裾は丁寧に折り返され、その先には包丁と、白い食パンが握られている。
「なにほ、う」
何をしているんだ貴様は、と言おうとしたが、歯ブラシに邪魔をされた。それに訊かずとも大体わかる。包丁を持って台所に立って、まずそれ以外のことをするはずがないのだから。
「ああカノン、おはよう」
口の中の歯磨き粉をとりあえず洗面台に吐き出して、訝しげな視線をサガに送った。それだけでカノンの言いたいことを悟ったサガは照れたような困ったような笑みを浮かべて、包丁を置き、半分に切った食パンにマーガリンを塗り始める。
「いやな、余っているから昼食にしようかと思って」
「…中身はどうするんだ?」
「ハムと、キュウリと…トマトが冷蔵庫にあったからそれで」
サガはもともと器用だ。普段しないだけで家事ができないことはない。包丁捌きもなかなかのもので、丁寧にひとつひとつの具材を切り揃えていく。
「……」
だが唐突なのがいけない。それでは冷蔵庫にもろくなものが入っているわけもない。ちゃんと言ってくれさえすれば、昨日町に下りたときに買い足してやったというのに。いくら器用でも、そういうところが家事に向いていないのだサガは。
2011/11/22 (Tue) 6:47
(弁当がわりにサンドイッチつくってたんです)
■煙草(山羊と蟹)
煙草を吸い出したのはいつからだったろう。特別うまそうだと思ったこともないのに、ある男が自室に投げ放していたそれに向けて、無意識に手が伸びていた。実際に吸ってみてもやはりうまいとは思えなかった。部屋が煙たくなって噎せた。便所から戻ったそれの本来の持ち主に呆れた顔をされた。窓を開けた。少し冷たい風が部屋に吹き付けた。もうあたたかい季節は終わっていた。
2011/11/29 (Tue) 10:25
(けっこう気に入っている。
実は全身で救難信号を送っている山羊がすきです)
■おめでとう(リア/ロス兄誕)
その人がいなくなっても、その人が生まれた日は来る。他に誰も一緒に祝う人が居なくても、自分はひとりで手を合わせる。恨みや妬み、理不尽さをこの身に巡らせて涙を流した。こんなものに意味はなくても、流せない人間にはなれず、流れたものを元には戻せない。
ああそれでも。たったひとりの兄弟だったひと。墓もない、その最期の姿もない。だから今日もこの愚かな自分が、涙声で呟く祝辞をどうか受け取ってほしい。
おめでとう、にいさん。
2011/12/02 (Fri) 8:42
■あい(カノン)
愛情なんて信じていない。だってそれは結果だ、過程を続けている今自分がそれを語る資格もないだろう。そう思うからこの感覚や感情を、自分は愛だなんて言葉で片付けたくはなかった。
でも愛からはじまる過程もあるんだろうか。愛情を信じてはじめて見つけられるものもあるんだろうか。そう考え出したら涙が出てきて自分が惨めに思えてくるから嫌だ。理屈を捏ね回して裸足で歩く、ただの子供じゃないかそれじゃあ。
ああ、子供なのか。
2011/12/13 (Tue) 21:54
■続・煙草(魚と蟹が山羊)
「この間な、」
遠慮とかどこかに置いてきたらしい、見目麗しいが尊大で傍若無人な男が、わざわざ俺に作らせたパスタをフォークでつつきながらのんびり口を開いた。俺は適当にブラックコーヒーを口にしながら耳を傾けた。
「シュラのところに邪魔したんだが」
「山羊がどーしたよ」
「ヤニくさくなってた」
「ああ?」
「しかもそれだ」
パスタを巻いてすすり上げる。男の視線は俺のすぐ脇、机のうえのすこし潰れた煙草のソフトケース。ハードな味でもないが甘さもない。スタンダードなお気に入りの銘柄だった。
「あいつにはダメだよ、酒と煙草は」
「わかってるっつの」
俺が勧めたわけじゃありません。バカな山羊が勝手に俺のを使い始めただけでしょう。
でも一応、すまなかったとだけは言っておこう。
2011/12/13 (Tue) 23:15
(子供に悪影響ですわよ)
■雪が降りました(星矢)
「おわーっ!すっげぇぇー!!」
見慣れた景色が白の化粧を施して、一晩のうちに世界を変えていた。ただ、空から落ちてくる氷の粒が地面にいくつも積み重なっただけなのに、たったそれだけでここまで違う世界をつくるのか。
居ても立ってもいられず、星矢は外へと飛び出していた。
「まじすげぇぇーっ!」
それはもうとにかく、知らないものなのだ。星矢は雪の降る地域で暮らしたことがあまりない。雪など、それが降る地域のひとたち、例えば特に氷河などから見れば珍しくもなんともないものだろう、しかし星矢はこんなに早い時期から降る雪というものもはじめてで、…ほんとうにはじめてだった。
「うわぁーっ!」
感嘆の声をあげると白い息が宙に飛び出した。空気は刺すように冷たく、防寒具がなければまともに動けそうにもない。星矢は空を仰いだ。雪明けの、青く澄んだ空だった。
2011/12/16 (Fri) 18:19
(雪国の雪をはじめてみたよ)
■もやり(ラダカノ)
永劫とか一生とかいう言葉を使うつもりもなく、ただ有る限りはその傍らで動き回る彼の姿を見ていたかった。何にも一番になど仕切れない。大切だなどと思ったことはない。きっとカノン、お前も俺をそんな存在だなどと思ったことはないだろう?
気の利いたことも言葉も何一つ与えられはしないが、それでもできることはある。退屈な日々の中で、見つけられる形があっただろう。自分は拾った、一番だとは死んでも言えないが、死ぬ間際に感じるのが彼のあたたかな体温であることを今も願っている。
2011/12/21 (Wed) 5:31
(このへんから、ぴくしぶの世紀末ネタがでてきたらしい)
■ゆきゆき(星矢と氷河)
雪の上から雨が降った。これで凍った道が歩きやすくなればいいな、と言えば、雪が溶けてしまってつまらないと星矢は不貞腐れた。つい先日までで積もりに積もった雪を相手に歩きづらいと文句を言っていたくせに。雪など馴れたどころか既にシベリアでの生活の中で当たり前になってしまっていた氷河には、もう思い出すこともできない新鮮さだ。
2012/01/06 (Fri) 8:40
(雪国のひとは雪を楽しんだりなんかしない)
■なんてばかな(カノン)
自分の顔なんて、身近な奴等しか知らないし認識できないのなんて当然の話なのに、帽子を目深に被って歩いた。大罪人たる自分が顔を見せて堂々と市場に繰り出すなんて、恥知らずもいいとこだとか、よくわからない言い訳ばかりして。
大きな外套を羽織っていたかった。寒さのせいではないのだけども、しばらくお気に入りになったそれを、あたたかくなる季節まで着続けた。だれかが馬鹿だといってくれたらそうだよなって外せたかもしれなかったけれど。
もしかしたら、そのとなりで笑顔振り撒くお兄さんの、家族を奪ったのは自分かもしれないとか。
なんだそりゃ、目が覚めてから自分で自分の頭を打って、のたうち回った。愚かで滑稽な罪人で居ても、許されることはないのに、本当に、馬鹿馬鹿しい。
床に脱ぎ散らかした帽子と外套だけが味方に見えた。
2012/01/26 (Thu) 23:11
(結構気に入ってるんだが相変わらずひどいネタだとおもう。)
■きたいしない
もう何が欲しいとか要らないとか、我が侭云いたいこともないけど、何が欲しかったかとか要らなかったとか、口をついて出るから困り者。聞き分けのよいいいこになるつもりで唇を縫い合わせたわけじゃないけど、今度は細める目を潰さなきゃだめかな、だめかな。
2012/01/31 (Tue) 16:17
■焼き肉(カミュミロ)
極寒のシベリアに比べれば、ギリシャの寒波などカミュにとっては大したこともないが、聖域の入口で仁王立ちして彼の帰りを待っていたであろうミロは、マフラーに大きな外套を羽織って寒そうに両手を擦り合わせながら、白い息を吐き出していた。ミロ、と声をかけてやると、想像していたとおり顔を明るくさせて、カミュ!と半ば叫びながら走って駆け寄ってくる。
「ようやく戻ってきたか!」
そのままの勢いでミロはカミュを精一杯抱き締めた。カミュもすぐその背に腕を回し、待たせてすまない、と小さく告げる。そうして、いつもどおり感動的な再会を果たした、はずだったが。
「……カミュ」
「なんだ?」
「痩せたか?」
「うん?」
「間違いない、少し肉が落ちただろう」
がばっ、と抱き締めていた体を離し、ミロは何やら複雑そうに目を細める。カミュの、冬間にしては薄着の格好を上から下まで何度も眺め、うん、と何かに納得したような何かを決心したような頷きを繰り返し、口を開いた。
「よし、焼き肉だ、焼き肉食いにいくぞカミュ!」
2012/02/11 (Sat) 12:35
(焼き肉!ってミロに言わせたかっただけ)
■ドライブ(カノミロ)
何がどうしてそうなったかなんて思い出せないが、アテナの計らいでカノンは車の免許を取った。わざわざ教習所なんか通わなくたって運転できますが、とか間違って口走ってサガに殴られながらも無事カノンは免許証を手に入れることができた。
だったらドライブするしかあるまい!!
カノンが免許を取ったと聞いてすっ飛んできたミロがガッツポーズで言い出した。しかし肝心の車がないのでわざわざ街まで下りてレンタカーを借りた。何の目的もなくただ車を乗り回すだけのために。
エンジンを入れると、助手席に座ったミロが地図を広げていた。俺がナビをしてやろう!と偉そうに言っているが、まず現在地の把握ができているようにはとても見えない。し、そもそもどこに向かうつもりなのか。そう訝しげに目を細めながらも、カノンはアクセルを踏んだ、道を走り出したら止まることは許されない。
2012/02/19 (Sun) 17:41
(車の免許の話をしていた)
■待ち合わせの
誰かが待っていると期待していた。相変わらず子供みたいな発想だ。ああ迷子だなんて気づきたくもなかった。迷わずどこかへ向かえてるなんて、そのどこかがわからないなんて。
道はじぶんで作るものって、言われなくても知っていて、わかっているのに誰かが導いてくれることばかり望んでいる。そう思っている自分がいやで、無理やり歩き出して、邪魔なものは踏み潰して。
迷子になって。
それでもどこかで誰かが待っているって、まだあきらめもせずに考えてることに絶望ばかりしていて頭を垂れた。まだここが途中だなんて、誰も。
誰も
2012/05/01 (Tue) 18:51
(plentyの待ち合わせの途中がすごくすきなんですが。迷子なカノンさんが迷子じゃなくなるのは聖闘士になってからでしょうなと思いつつ、聖闘士はアテナがいないとみんな迷子で子供みたいだとちょっと考えて複雑な気分になりました)