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every30minute ログ 5

※やっぱり大した解説はないです
※☆矢にあまり関係のないものや語りはログにしてません




■ロス兄 (ロス兄とシュラ)

シュラ鬼ごっこしよう!

13年前とまるで変わらず、両腕を広げて提案してくるアイオロスに、変わらずシュラはどんな態度を示せばいいのかわからない。
「まったく、いい大人が恥ずかしい」
そう言って邪険に扱うサガやアフロディーテのようにすればいいだろうか。しかし明らかにしぼんで大袈裟に落ち込んだ顔をするアイオロス相手に、シュラは何故か強気に出ることができなかった。


2011/07/22 (Fri) 12:17





■なまえ (シュラ)

俺たちには名前もないことが多い。だから此処に連れてこられたときに適当な名前を貰う。俺はシュラだ。名前をくれたのは東洋人だった。そうなれと言われてような気もするし、そうでもなくただ俺の星座を見て言ったのやもしれないし。

そういえば、あいつがはじめに貰った名前はなんだったろうか。いつの間にか死の面だなんて声高に名乗るようになって、昔の名前もぼんやりしている。それでいいのかもしれない。
自分もシュラであることを捨てたら、生まれ変わることができただろうか。


2011/07/26 (Tue) 10:38





■うみ (カノンとアイザック)

来客用のソファーを陣取ったまま動かないのなんて、今に始まった話じゃないが。それにしてもだ。立派な自室を頂いているくせに、なぜいつも此処で眠っているのだろう。そういえば、彼が自室でおとなしくしているところなど見たことがない。
アイザックがそのよく眠る男の肩を揺らしたのは親切心からであった。こんなところで寝てるとまたソレントに嫌味を言われるぞ、と促しても、どうやら熟睡中らしい。規則正しい寝息が崩せない。
なんで部屋で寝ないのだろう。このソファー、寝転がってもカノンの身長では足が大きくはみだすし、人目にもつきやすいというのに。舐められるのが気にくわないからだろう、下のやつらにはだらしない姿を見せるような男でもないのだが。
「部屋が広くて落ち着かないとか、そんな人間でもないだろ、あんた」
少なくともアイザックはそう思っている。


2011/07/30 (Sat) 23:11

(個人的にこのふたりがブームでした)





■海皇 (ポセイドンとカノン)

孤独な子供が陸から海に落ちてきたのは、偶然ではなかったのかもしれない。好奇心からあれやこれやと手をつけて、その過ちも愚かさも認められないまま、尊大で卑屈を潰し続ける、自分から見ればほんの赤子にすぎない男が。
海の神は美しいものが好きだ。子供は綺麗な顔をしていた。波に飲まれて岩場に打ち付けられて、その身はぼろ雑巾のようであったが、その姿形は整っており、未だ成長しきらない肉体はどこか淫靡ですらあった。なのに子供は隠しきれない放埒さを全身で主張して、はじめから海の神に頭を下げたりなどしていなかった。

せっかく美しく生まれてきたのに。残念だ。孤独を持て余したままその綺麗な瞳に涙も浮かべられない。地上から落ちてきた子供は、愛情を受け取る術すら知らない。


2011/08/06 (Sat) 6:22





■あつい (星矢とカノン)

夏も真っ只中に突入して、日差しも酷く厳しくなって。こうなると、相当なバカ以外は部屋から殆ど出なくなる。ギリシャの殺人的な日差しの下に、誰も好き好んで出ようだなどと思わない。

炎天下、訓練場で拳を振り続ける候補生たちを柱の影から見ていたのは、星矢とカノンだった。星矢は師である魔鈴に会いに来た帰りで、カノンはただの退屈しのぎだった。
「あつそーだなぁー」
星矢が気の抜けた声で言う。
「あついだろーなー」
カノンは欠伸を漏らした。今にも眠り出しそうだ。
「カノンは手伝わねぇの?」
訓練場の真ん中で指導を行うアイオロスとシュラを指差しながら、星矢が船を漕ぎ始めたカノンを見る。寝るなよぉ、と背中を叩かれたので、仕方なく首を持ち上げて目を擦るが、眠気は覚めない。
「なんだって?」
「だから、手伝わねぇでいいの?」
「俺は担当じゃない」
「へえ~」
自分から訊いたくせに大して興味も無かったか、すぐにカノンから目を外し、伸ばした足を落ち着きなくばたつかせる。ちょっと眉をひそめて今度はカノンが星矢に視線を向ける。
「お前こそ、喜んで飛び出していくかと思ったが」
子供だからなんて少々大人気なく返すと、星矢は気にせず笑ってみせた。
「最近はガキだってアタマ使うんだぜ」


2011/08/11 (Thu) 17:02





■にいさん

蝋燭の火が揺れている。吹き消す人間もいないまま、日は暮れて時計は一巡りした。結局、彼はこの日も帰ってはこなかった。
(せっかくの誕生日なのに)
瞬は少しだけむくれて机に顔を伏せる。兄がそういうヒトだって、わかっていてもふてくされていたい、小さな我が侭を呟いてみて、やっぱり止めた。彼を責めたいわけじゃないのだ。ただ少し、寂しいだけなのだ。

用意したケーキは明日、みんなで食べてしまおう。それで、みんなとおめでとうと呟こう。こんなに暖かな日に、こんなに優しい日に、小さな我が侭を言うべきはこんな出来の悪い弟じゃなく。


2011/08/17 (Wed) 7:20

(忘れてたわけじゃないよ!一輝兄さんおたおめ!)





■ホラー映画

夏には、ホラー映画を見るのが関の山。しかし毎日死人の顔を見るのに慣れてしまったこの身に今更ホラーなんてちゃんちゃらおかしいってなわけでして。アフロディーテがレンタル屋で借りてきた、最近話題の超低予算ホラーも全く見る気がしない。シュラとふたりで見ろよ、と悪態吐けば殴られた。理不尽にも程がある。

(何て可愛げのないやつだ、なんて甚だお門違いな文句を突きつけて出てってしまったアフロディーテは、そのあとそのレンタルDVDを持ってミロとアイオリアとカノンの元に行ったとかなんとか、風の噂で聞いたような聞かなかったような)


2011/09/01 (Thu) 16:30





■お盆

この季節の間ずっと、冥界は静かだった。不思議なものだ。確かに、裁きの舘や冥王の居座るジュデッカは、地上の季節や状況に関わらず常に冷たい静寂が流れており、その無慈悲にして公平な判決を死者たちに下し続けるのであるが。

「一体誰が、この時期に魂が帰ってくるなんていったんでしょうね」
「…死者や、死後の世界に対する考え方は、地域、宗教によって大きく違います。しかし根拠のない話ではないのでしょう」
「ええ、実際にこうして、里帰りするものがいるのですからね」

既に罪状も決まり、新たなる生をその先に約束されたものたちが、監視のもとに揃って冥界を離れるこの季節。

「でもわたしは嫌いじゃあ、ないですよ。そうやって死んだ者にも、後があるというのはね」
「私も、嫌いではありません」
些細なやり取りを交わしながら、彼らは目を合わせてはいなかった。相手の表情もわからないまま、手探りをする様子も見せず、ただ眼下に広がる荒野を見る。
「静かですから」


2011/09/01 (Thu) 16:37





■幻

床をのたうち回って目が覚めたとき、真っ先に腕を伸ばして震える指先を左足へと触れさせた。どこにも損傷はない。なのに鈍い痛みがそこを襲う。幻視痛だ、足が引きちぎれる夢でも見たかい?痛みで胃の中のものすら戻したデスマスクに、アフロディーテが冷たく笑った。
「相当トラウマになったようだな」
逆らえば殺される、その方がましだとさえ思った。あの残虐な男は不敵な笑みを浮かべながら、何食わぬ顔で自分の眉間に指を突き付ける。途端、網膜の裏を走る幻覚に、みっともなく自分はわめき声をあげる。叫ぶ。殺せと懇願する。

狂っている、というには出来すぎた調教だった。吐き気が止まらない。今更この頂に女神なんて望まないが、自分はあの男の玩具になりたいわけではないのだ。


2011/09/13 (Tue) 14:05





■のぞみを

欲しいと言えば何でも手に入った、わけではなかった。けれども必要なものはいつでもすぐそこにあった。不自由はなかったけれど過分だった。あれよこれよと与えられた分だけ、自分がどんどん欲深くなるのを生身で感じた。

愛されていた。それを疑ったことなど一度もない。望めば何でも手に入るなんて最初から夢物語なのだから、過分をぐずったのはただの癇癪だった。わがままなわたし。どうせ与えられるだけでは身が重くなる。気付けたのは、誰よりも自分を愛してくれた祖父が穏やかにその瞼を下ろしたからだ。涙を流せば、まだまだ小さいこの身体は、先よりずっと軽くなった。


(女神の自覚はある意味、そこにあるのかなとかなんとか。沙織さんの話もかいてみたいです)


2011/09/22 (Thu) 17:11





■音痴 (ロスとサガとその他)

どうにもこうにもアイオロスは音痴で困る。気分が良いと楽しげに鼻歌のひとつやふたつも披露するのだが、これが酷く調子の外れた音なのだ。本人も音痴な自覚はあるらしく、おいへたくそ、と悪態を吐けば困ったような目を向けてきた。まだこんなの軽い咎め方だ、サガは一向に改善されないアイオロスの音痴にそろそろ我慢ならなくなっている。こうなったらわたしが直々に稽古をつけるとまで言い出した。たぶん三日ももたないなとはアフロディーテの言い分だ。


2011/09/29 (Thu) 0:06





■君が元気で何よりです(カミュミロ)

それはもう、本当に嬉しそうにして駆け抜けていくものだから。またそんな小さな子供みたいなことして、なんて呆れた声すら出せないのです。年に数回も聖域に帰って来たら良いほうの、絶対零度鉄面皮、鮮やかな赤い髪を長く伸ばした氷原の貴公子は随分と大きな子供になつかれてしまったものです。面倒見るのも大変でしょうに。けれども彼はちっとも疲れた顔なんてしないで、やさしく子供を抱き止めるのです。体格差なんてありません。むしろ子供の方が少し大きいくらいです。あらあら、もうもう。じゃれつく金の髪が鬱陶しく首筋にまとわりつくのでさえ許容して、彼は落ち着いた声で子供の名を囁きました。


2011/10/17 (Mon) 18:12





■がきんちょ(星矢)

子供扱いされるのは甚だ心外だが、だからといって自分を大人の範疇に放り込まれるのも嫌だった。昔っから大人には良い印象がない。勿論そんなことだけが理由だったらただの逆恨みになってしまう。星矢は、大人の「自分達は大人だ」というその態度を嫌っていた。

蔑まれても、かっこわるく生きてきた。地に伏したまま誰にも何も言えずに死ぬのはごめんだ、英雄になんかなれなくっていい。長くなくていいから一瞬、最期の一瞬をすばらしくかっこよく飾りたい。
それは大人になったってきっと、変わらない大事な姿だと思うのに。目線が高くなるにつれて見え出す自分の周囲の景色に、それを潜める大人が星矢には理解できない。たくさんの人を前にして、後に引けなくなるとわかるよ。だから君も子供なんだ。そう言われてもわからない。きっと、まだわかりたくもないのだろうと頭の何処かが冷静に判断を下していた。


2011/10/24 (Mon) 16:56





■線路

もう小宇宙が燃やせそうにない、聖域に戻るまでに出血多量で死ぬだろうな。わかっていたから無理に動こうとはしなかった。視界が滲んだり揺らいだり忙しい。酒に酔ったみたいだ。冗談も頭を奮わせられない。

目の前には、線路があった。古びた線路だ。欠けたところも多いから、きっともう廃線になっていたのだろう。人気もないこんなところに、ただひっそりと伸びる線路。その先は地球が球形なおかげで見ることができない。

考えた。この線路の先を考えた。これを辿った先には何があるだろうとぼんやり考えた。思い出すのは、ほんの幼少の時を過ごした小さな街。まだ右も左もわからないまま過ごした日々。開いた手のひらは汚れてなんかなくて、生ぬるい味すら知ることはなかった。

ああそうだ、あの日々が最後だった。最初で最後の思い出だ。だけど今この線路の先を、自分はその記憶で満たす気はなかった。首から上を持ち上げた、見据える先にも、硝煙と、溺れるほど赤い血だまりを。屍の上に立つ御旗を。



俺の帰る場所は、もうそこにしかないのだ。


2011/11/05 (Sat) 19:30