every30minute ログ 2
※やっぱり大した解説はないです
※☆矢にあまり関係のないものや語りはログにしてません
■罪状 (カノン)
だからどんなに年月を重ねても、季節が巡っても、忘れないのだとカノンは思う。黒くもない、だが白いままでは居られず、また白いことを誰よりも憎んだ。ペンキに浸した筆はどこへ置いてきたのかもう忘れたが、置いてきたことは忘れない。色んな色にまみれたそれを纏って、裸の王様になろうとしたことを忘れない。
手は赤い色に濡れてもなくて、狡いままに、カノンは多くを葬った。そのどれも把握せず、また葬った証拠すらその身に残さず。その罪は潔白であるからこそよく浮き立つ。
黒くもなく、白いままを憎み、愚かな足をすり減らした素直な思いを忘れない。後悔と誰にも知られない涙を抱えて、敗者の装いで生きるのだ。
死を迎えて、許されるまで。
2011/03/03 (Thu) 0:08
(ようするに、手を汚さないで奪ったものについて)
■翼竜のひとりごと (ラダカノ)
カノンは弱くない。だからきっと、これはいわゆる『余計なお世話』という奴なんだろう。要らないと捨てたものは要らないものかもしれないが、いつかそれとも全て向き合って自分を愛さなければならない瞬間がくることを、ラダマンティスは知っている。多くの死の底からそれを実感している。
その瞬間が来たときに、向き合えず逃げるほどカノンは弱くないはずだ。少なくとも、今自分が知っているカノンは。
カノンが捨てたものを拾い上げて、今も昔も知っていることも知らないことも、ひっくるめて好きだと言えたらいい。いつか向き合う日がきた時に、少しでもカノンが自信を持って顔をあげていられるように。そういう存在でありたいなど、馬鹿馬鹿しくて吐き気がするが、なんと罵られても仕方あるまい。そうありたいのだ。カノンが誰よりも愛している存在がカノン自身であってほしいと、今日も考えては目を閉じる。
2011/03/04 (Fri) 17:59
(書きたい話のメモ)
■獅子と山羊
もう無理だろう。それだけの言葉を発するのにも随分な時を要した。その瓦礫が積まれて、必死に掻き分けて、けれども中の気配は既に感じられず。血と砂で赤黒く濡れたてのひらをぶら下げたままシュラは立ち上がる。傍らでまだがむしゃらに瓦礫を分けるアイオリアを見下ろした。
「もう無理だ」
もう一度、今度ははっきりと、だがアイオリアは聞く耳を持たない。強く歯を食いしばり、両目からぼろぼろと涙を零した。怒りか悲しみか、或いは無念なのか、腕を震わすアイオリアはそのまま勢いに任せて瓦礫の山を殴りつけた。
「まだだ!俺はあきらめんぞシュラ!」
…例えば誰かひとりが助かる可能性を求めて、幾数人が危険な場所に出たとしよう。割に合わないよ。運が悪かったのさ。
本当にそうだろうか。そう言ってこの大量の瓦礫の下に見捨てられた人はどれだけいるのだろうか。自分が見捨てた人は。
「もう、」
「まだだ!」
幼い正義に出会うたびに自分という人間を疑いたくなる。無理だと言い訳をして何も持たないことを、誰が狡いと責めてくれるだろう。自分は汚れていると言い張って、誰が納得してくれるだろう。
どれだけ手を汚しても、アイオリアはシュラのようにはならない。その手がたとえ他人の血でまみれたとしても、アイオリアは瓦礫を掻き分ける腕を止めたりはしない。そしてそのことをどれだけ羨んでも、シュラはアイオリアにはなれない、シュラにアイオリアを尊ぶ資格もない。幼い正義は遠い昔に、どこかの瓦礫の下で見捨ててきたから。
2011/03/06 (Sun) 11:09
(実はシュラリアが滅茶苦茶好きです。書かないのは、このふたりは超ノンケだと思うから)
■くいもん (盟と青銅)
師匠は好き嫌いをしない。自分には好きな食べ物はなんだとか嫌いな食べ物はなんだとか、しつこく尋ねる癖に、自分のことは気にしないらしい。
「食えねぇものじゃなけりゃ、腹は膨れるだろうが」
師匠の嫌いな食べ物なんですかって、聞いてみたらそう言われた。そりゃまぁ、そうですが。でも嫌いな食べ物がないなんて、それは有り得ないからきっと、嫌いなものでもちゃんと食べるようにしているんだろうなぁ。椅子からだらしなく足を垂らして、そう幼心に感心していた。
「もう、星矢!駄目だよ好き嫌いしちゃ」
「だー!嫌いなもんは嫌いなんだからしょうがないじゃん!」
「ほら盟を見なよ。何にも文句言わずに食べてるじゃないか」
伸び盛りに入った兄弟たちと食事を共にしながら、盟は少し苦笑いする。先程から星矢と瞬は同じやりとりを繰り返していた。星矢が頑なに食べないトマト。盟は別に嫌いではない。むしろかなり好きな部類に入る。確かにまぁこのトマトは少々酸味がきつくて耐え難く思われなくもないが。
「とにかく!ぜぇーっったい食べないからな!」
「全く、盟もなんとか言ってやってくれ」
行儀良く食事をとっていた紫龍ですら少し呆れ顔だ。妙に頑固なふたりが折れないから、疲れてきたのかもしれない。
「別に俺も、好き嫌いがないわけじゃあないぞ?」
これ見よがしにトマトをひとつ、口の中に放り込みながら星矢を見る。星矢は両手を頭の後ろで組ませながら、ふてくされたような顔をして盟を見返した。
「じゃあなんなんだよ」
「…もう少し大きくなったらわかるようになるさ」
「えぇ〜」
はぐらかされたと感じたのだろう。文句ありありに足をばたつかせる星矢に、まだまだ餓鬼だなぁなんて冗談の応酬を重ねながら。
別に、嘘でも何でもない。大きくなれば嫌でもわかるようになるのだから、よほどのことがないなら今特別にそれを知るべきでもないだろう。
まだ納得いかず文句を散らす星矢の皿には、まだ綺麗なままトマトが残っている。
2011/03/16 (Wed) 19:07
■おとめざ (乙女座考察)
普段はどれだけ促しても、どれだけ引っ張っても、一度座り込んだところから動こうとしないくせに、どこかにスイッチでもあるんだろうか。動き出したら次は止まらなくなっている。正しくたって動かない。間違ってたって止まらない。全く、なんという生き物なのか。
「自分勝手を自覚したこと、あるか?」
半分呆れた声でカノンが訊ねた場面に丁度居合わせたムウは、はっきり言う人だなと僅かに感心した。訊ねられた当事者は気分を害することはおろか、自分に言われたのだとも考えていないかのようにけろりとした様子で、平素通り瞼を下ろしたままカノンを振り返る。
「勿論だとも」
自信満々に返されてカノンの眉間に皺が寄る。
「自分勝手でない行動をとっている人間など、存在しないのだよ。その身を犠牲にするものも、誰かに和するものも、結局は自分がそうしたいからするだけだ」
堂々と言い切られてしまうとなんとも言えないものだ。その発言こそまさしく自分勝手なわけであるが、確かにこの男についてなら真理の言葉だとは、納得せざるを得まい。…不器用も、ここまで来るといっそ清々しいものである。
2011/03/21 (Mon) 23:04
■ハーレムシーン2 (双児宮いっぱいの猫の話/続いてます)
scene2
「…そうそう、それで昨日は寝るのが遅くなって」
「これからは宮にキャットフードが居るんじゃねーの。食べ盛りのケダモノだからなァ」
「ああでも、触り心地はなかなかのものだよ。懐きがいいし、あれは飼い猫だろうね」
「ははっ、猫がいっぱいの島も近くにあることだし、野良でも人馴れしてるやつはいるんじゃないのか」
「……」
和気あいあいとした執務室での会話は、書類整理の合間に交わされたものである。昨晩アフロディーテの布団に潜り込んできたとかいう、ケダモノの話。いつものようにデスマスクやシュラと軽口を飛ばし、執務に飽きて興味を持ったアイオロスが加わり、それを微笑ましく、しかしアイオロス仕事をしろと言いたげにサガが見守っている。
ただひとり、ミロだけはその会話に挟まれて眉を顰めていた。
「しっかし飼い主もしっかりしろってんだ。海界に行かなきゃなんねーから忙しいのはわかるけどよ」
「まぁまぁ、いいじゃないか。仔猫一匹くらい」
「そうだそうだ。聖域には俺たち含めてたくさん人がいるからな。カノンが居なくても誰かが面倒見れるさ」
「あれで毛色がゴールドだったら完璧だったのに」
「惜しいなあ、ミロ」
「…おい、その名前で呼ぶのはやめろ」
そろそろ耐えきれなくなり、ミロは不機嫌そうに低い声で抗議する。視線が一気にミロへと集まった。
「別にお前のことじゃないぞ」
「俺のことであってたまるか!いいからやめろ!」
「言われてもなぁ〜名付け親は飼い主さんじゃねえか」
にやにや笑いながらそうのたまうデスマスクとアフロディーテに、ミロはふるふると拳を震わせた。からかっているのだとは明白なのだが、ここで喚いてもこの屈辱は解決しないどころかますます深まるだけだと、そのくらいはミロにもわかっている。
「…カノンのアホぉぉー!!!」
だから精一杯、この場にはいない全ての元凶に悪態を吐くしか、術はなかった。
2011/03/28 (Mon) 17:54
■旅 (ロス兄と星矢)
アイオロスの放浪癖には聖域の皆も、迷惑被りながらあきらめている。ちょっと出掛けてくると言ったきり一週間弱は帰ってこないのにももう慣れが来ていた。未だサガは納得いかないようだが、何を文句つけてもへらへら笑って結局改善されないことはわかりきっている。
そんなアイオロスの旅先での土産話を、星矢は口の中の魚を骨ごと噛み砕きながら面白そうに聞いていた。
「いいなぁ、旅。俺もいってみたいなぁ」
何だかよくわからないが、このふたりは妙に波長が合うらしい。
「旅はいいぞ〜言葉が通じなくて困るときもあるが、それもまた醍醐味だ」
「じゃあ夏休みさ、どっか連れてってくれよ。ギリシア語とか日本語とか通じないとこにさ」
一応、グラード財団がお金を出して、今の星矢は学業も行なっている。勿論、本分は若くとも聖闘士であり、決してそれを妨げることのないようにとのことではあるが、星矢は勉強があまり好きではないために、この『なんちゃら休み』というものを非常に楽しみにしていたりする。
「ははは、良い意欲だ!よし、じゃあ夏休みとやらには西の方にぶらり旅といくか!」
「まじ?やった!」
はしゃぐ二人には、周囲から漏れるため息の音は露ほども耳には入っていない。
2011/04/10 (Sun) 13:02
(文章がかなり低迷していた)
■射手座 (沙織さんと射手座聖衣)
気付けばいつもそこにあった黄金の箱が、わたしに話しかけてくるような感覚がして。わたしはいつもそのまん前に座り込んで待っていた。冷たい無機な箱のはずなのに、どことなく太陽のあたたかさを揺らめかせたそれは、お爺様がわたしのためにと遺したたくさんのものの中でもなぜだか特別なものだった。
どこから来たのかしら。おおよそわたしの住む日本のものには似つかわしくないことくらいは幼いわたしにも理解はできて、しきりに首を傾げていた。何も声は聞こえてこないのに、わたしはその箱をなにものかと捉えていて。なぁに、もっとはっきりおっしゃって。なんて大きな声を張り上げていた。
黄金でぴかぴかなのに、あなたは素直で謙虚だわ。
目立つことなく屋敷の片隅に置かれて数十年が過ぎた、その箱はいつになっても色褪せることなく、埃を被って汚れることもなく、太陽の輝きを保ちながら、わたしの宝物で有り続けたと。
…思い出して、涙を流す。
2011/04/11 (Mon) 8:00
■てのひら (ラダカノ)
掴まれた左手から思うのは、無愛想な奴のこと。闘うためにつくった拳はやわらかくも何ともなく、小さくもないから大人しく相手のてのひらの中に収まることすら、ないのだが。
焦ったように手首をとられて、手の腹を指でなぞられそのまま絡めとろうと願う一連を、目を開いてただ眺めているだけの自分がどのように見えているのか。少し気になった。無駄にあたたかなてのひらが、自分のそれほどあたたかくもないてのひらと合わさって、酷く不安定な感覚を味わうもその状態に晒されていたいような気もして、押し黙る。
滲み出るなにかがだだ流しになっても、振り払えない、ほどけない、離れられず、拒絶できない。逃げられなくなった壁際で、どんな顔をするだろう。できなかったのではなくしなかったのだと伝えたら、奴は喜ぶのだろうか、それとも失望するのだろうか。わからないままゆっくりと、追い詰められて瞼を下ろした。
例えば自分の手も、こんな風にもう少し傲慢であったなら、無駄な後悔もなく自信を胸に立って生きていけたのだと。羨みながら受け入れて、今日も何かを間違えたような。
そんな気がした。
2011/04/15 (Fri) 6:58
(なんかいっつももやもやしてますね)
■じいちゃんず (261組)
水中に垂らした糸が波と共にゆらゆら踊る。引く気配もなく、実に穏やかだ。つまらん、と低く呻いた。
「童虎、お前はよくこんな退屈な時間を凌げるな」
シオンは傍らで自分と全く同じことをしている童虎を見る。先から小一時間ほどずっとこの状態だというのに堪えた様子はない。口元に笑みすら浮かべながら、空気と水の境界線を眺めては竿を揺らしている。
「なんじゃ、若返って待つこともできなくなったか」
「馬鹿にするな。私は魚ごときを捕るために待っていたくなどないといっているのだ」
光速の拳を持つ自分達にとって、魚一匹捕まえることなど実に容易い。こんな風に糸を垂らして待たずとも良いのだ。しかし童虎はシオンの文句には耳も貸さず、やはり糸を揺らして笑った。
「シオン、肉体は若返ったといえどわしらは年を取った。もう昔のようにはなれんよ」
時間が巻き戻ったわけではないからと。そんなことはシオンにだって痛いくらいわかっている。ただひたむきに何かを信じたり、真っ直ぐに掴みかかりにいったり、新天地を求めて立ち上がったり。そのどれもが遠い過去の産物に感じられて、そのどれにも魂が昂ることはすでになく。
「…腰が、重くなったことは認めてやる」
垂らした糸はまだ引きを見せない。シオンはひとつ欠伸をして、その水面を眺めてはため息を吐いた。
2011/04/19 (Tue) 7:46