every30minute ログ 1

※やっぱり大した解説はないです
※☆矢にあまり関係のないものや語りはログにしてません




■仏語(カミュミロ)

ときどきカミュはフランス語を話す。それも唐突に、しかもよくわからない場面で、だ。当たり前だがミロにギリシャ語以外が通じるわけもないので、ミロはただひたすらにきょとんとするのみである。
「なに?何ていったんだ?」
耳慣れない言葉がその場に流れていくのを、半分混乱した頭で注意深く聞いてみるも、そんなことでわからないものがわかるようになるはずもなく。だんだん滅茶苦茶に戸惑いはじめてくるくると目を泳がせた。頼むカミュ、俺にもわかる言葉で話してくれ!

(あ)
でも今のはわかった。慌てまくっていた形をすとんと収めて、ミロはじっとカミュの顔を見つめた。カミュはようやく謎のフランス語を話すのをやめて、ミロと向き合う。今のはギリシャ語しかロクに話せないミロにもわかった。それだけ有名でわかりやすい一言。ミロはにやりとカミュに笑う。

「俺も愛してるぞ、カミュ!」


2011/02/20 (Sun) 8:51





■指(ラダカノ)

綺麗な指だ。と、柄にもないことを思った。決して女のようにほっそりとなどしていない、なるほど戦場に生き抜く戦士の、しっかりとした指。
少々荒れたところはあれど、目立った傷もつけない男の指は、ひどく強気にも、また弱気にも見えた。そしてまた、血に塗れて汚れているのに、まこと人に触れたこともないような色をしている。綺麗だと思った。何ひとつ隠さないその指が何よりも綺麗だと思った。

人間の指だ。
絡めると、生きている音がする。この優しくも厳しくもないありのままの指のかたちを、ラダマンティスしか知らない、ラダマンティスにしかわからない、ラダマンティスしか愛さない、そうであればよいとほくそ笑む。


2011/02/20 (Sun) 9:10

(うちのラダはカノンの手がすき)





■うみのそこ(カノン/海界来たばっかりぐらい)

水の中、と云うのは。厳密には違うが、音がよく響く。思わず漏らした自分の息の音だけでも、こんなに気にかかることになるとは。思ってもみなかった。
ひとりは慣れている。今更そこで無駄に不安を抱えたり落ち着かなくなることはない。むしろ気分はひどく澄んでいて、今は何からも自由であった。そう、自由なのだ。何をしても。何をしても、反応を返すはこの水ばかりで、此処には、自分以外には誰もいないのだから。揺らめく水面に影はなく、ただ静かに心臓が脈打つ。


だから、しゃくりあげて笑う自分の声も、驚くほどよく鼓膜を震わせて。まるで鏡のようだ。方向感覚は狂って自分の立場もわからなくなった。ただ賤しい身姿だけがよく映る。このうつくしき水の中。


2011/02/20 (Sun) 12:09





■闇の女王(パンドラ様)

アリスの落ちた穴が気になって仕方がないのだ。遠くから開幕のファンファーレはなるけれど、賑わしい音は右から左へと流されていく。私は父の手を握り締めながら、アリスの落ちた穴について考えた。眠りにつく前に読んでしまった有名な物語。

私の兎は一体どこに現れるのかしら。
不思議の国に憧れた。常識のひっくりかえった異常な世界に酔いしれた。アリスと重なったたくさんの少女たちも、きっと私と同じなのだと信じていた。優しい父が遠く指差した。パレードの足音が私に近づく。



道化姿の誰かが私の前で立ち止まり、私に一輪の花を差し出した。私は慌てて顔をあげた。道化の誰かは笑顔を崩せない。私はおずおずとそれを受け取った。気の逸れていることを責められたような気がしたのだ。けれども視線は常に周囲へと向けられて、私は探す、私のために開かれる不思議の国。

アリスはどこに落ちたのかしら。


高らかに鳴り響くトランペットの音に目も覚めず、立ち上った砂埃にまばたきをすることもない。無邪気なこどもの、残酷な歌声だ。アリスの落ちた穴はどこ?



…暗い深い地の底で、立ち尽くす私の落ちた国は此処。


2011/02/20 (Sun) 12:28

(People In The Boxの「Alice」という曲を聞きながら)





■ハーレムプロログス(双児宮いっぱいの猫の話/続いてます)

prologue

久しぶりに戻った双児宮は灯りが点いておらず、まだ夕暮れ前であるというのに暗かった。おや、とサガは首を傾げる。カノンは海界だっただろうか。そういえば此処しばらく顔を突き合わせていない。突き合わせたら突き合わせたでいがみ合いばかりするのだが、何も交流がないのは少し寂しい思いがするものだ。何だかんだで結局サガはたったひとりの弟が可愛いのである。
灯りを点けたが、やはりどこにも姿は見当たらない。いつもみたいにソファーに転がってるということもないようだ。もしかしたら部屋で寝ているだけかもしれない。妙な期待を持ってサガはカノンの部屋の前まで行ってみた。人の気配は感じない。
感じないが、
「…?」

何かの気配は、感じる。

扉をかりかり引っ掻く音がしたかと思えば、にゃあーと愛らしい鳴き声が僅かに聞こえる。サガは一瞬固まった。物凄い早さで頭を整理して、自分を落ち着かせるために大きく深呼吸をする。

意を決して勢い良く部屋の扉を開けた。
「……!!」
にゃあー

簡素な部屋の寝台の上には、小さな毛の塊がうずくまっていた。



2011/02/20 (Sun) 13:44

(ちなみに、正式なタイトルは「ミロハーレム」)





■ハーレムシーン1(双児宮いっぱいの猫の話/続いてます)

scene1

その日、海界から日帰りで仕事をしてきたカノンを双児宮で迎えたのは、満面の笑みを讃えたサガと、その膝の上で気持ちよさそうに眠る猫だった。
「お帰りカノン」
「…ああ」
呼応するかのように、猫も目を覚ましてにゃーと鳴く。さてカノンはどうしたものかと首の後ろを髪の上からがしがし掻いた。

「カノン、この猫はいったいどうしたんだ?」
お前の部屋に居たのだ、と、笑みも絶やさず尋ねてくるサガに、別段怒った素振りは見られない。
「…一昨日、街で拾ってきた」
「ほう、お前が…」
サガは優しく膝の上の猫を撫でた。なかなか毛並みよく、野良とは思えない寛ぎぶりだ。恐らく捨て猫なのだろう。子猫ではなかったが、まだまだ元気盛りのこどものようである。

不意に、猫は身を起こしてサガの膝から飛び下りた。そのまますすすと少し離れた場所に立つカノンの元へと駆けて、足に擦りよる。
「懐いているのか」
「…懐かれてなかったら連れ帰ってない」
「ははは、可愛いな」
どうやらサガの機嫌はいいらしい。カノンはほっとしてこっそり息を吐き、足下の猫を抱き上げた。

「そうだ、名前はなんというのだ」
「…名前?」
サガの質問に、カノンは盛大に顔をしかめた。
「名前が無ければ不便ではないか」
なにを期待しているのかうんうんと頷くサガに、カノンは二度三度表情を複雑そうに変える。しかしやがて堪忍したのか、物凄く嫌々そうに、更に平素以上に重たい調子でその口を開きはじめた。

「……ミロ」


2011/02/20 (Sun) 15:55





■焼かれた網膜(ロスが憎いサガ/それでもロスサガ)

黒々とした鬱屈を重ねながらも、私はどこかで、自分はそれでも正しいのだと、自分の理想は誰にとっても理想に違いないと、ひたすらに信じていたのだ。深みに落ちぬ真白の翼を携えたあの男が、自分の世界に侵食してくるまでは。

あんなにも浅はかで移ろいやすい男であるというのに。何があの男の全てを導いているというのだ。まるで誰からも愛される、たったひとりの小さな神のような。

その情けない微笑みすら、美しいのだ。
ああ、あの光がここに降り立った。ただその瞬間から、私の目に正義が映らない。燦々と照らし出されて、私の影がどこにもない。明るく惨い真昼の世界で、私は屈辱的にも迷子になってしまったようなのだ。その男の姿も形も、赤く光って確認できないくらいに。


2011/02/20 (Sun) 23:48





■ノンケな蟹さんのぼやき(カミュミロのいちゃつきぶりに辟易する蟹さん)

別に、男が男と寝るとかいう事態が存在するこたぁどうだっていい。そういう趣味の奴もいるし、『できちゃった』なんてこともないからこっちのが楽だ、なんて奴もいるだろう。ただ俺はそういう人間ではなく、男として女という生き物を心底愛していて、そんな男同士でべったり幸せそうに抱き合ってるところを目の前で見せられて『微笑ましいねぇ』なんて言えない人種であるっつーことは理解してもらいたいのだ。でかい図体して甘い囁き合いをするなってんだむさくるしい。愛してるとか真剣に言うな背筋が凍る。そんで何が悲しくて身内のそんな痴情を見せつけられにゃならんのかも謎だ。つまり人目は憚れバカップルども!


2011/02/21 (Mon) 13:27





■我が師のひとりごと

わたしはミロを誰よりも愛していると思っている。この世界の端から端という人々を調べ上げても、わたし以上にミロを愛している人間はいないと、そう思っている。しかし『だからミロはわたしのものなのだ』などという傲慢な考えはついぞ持ったことがない。ミロもわたしを心底愛してくれているとわたしは知っているし、わたしはミロを所有物にしたいと願っているわけではない。むしろわたしたちが愛し合うというのであれば、この傲慢は廃されて然るべきであるし、何より本当に、わたしはミロを自分だけのものにしたいとは思わないのだ。

もし仮に、ミロがわたしではない誰かを愛してしまったとして、わたしがそれを許せるかと問われれば、それはノーだ。クールではないが、わたしはそれで納得してしまうような甘い愛情をミロに捧げているわけではない。ならばそれは何なのかといえば、わたしはただ『そんなことは有り得ない』と知っているだけだ。わたしはそれだけミロを愛しているし、ミロに愛されている自覚がある。

だからわたしはミロと、ギリシアとシベリア、遠く離れていたとしても何も心配はしていない。わたしはミロを信じている。また信じられていると、そのこともまた強く信じているのだ。


2011/02/21 (Mon) 22:02

(私はよくラダカノとカミュミロを対比で出すのだが、この違いが何となくでかい気がする。
私、ミロは案外カミュに独占されていたい人間なのではないかなと思うのです。独占というか…特別でいたい!俺が特別!みたいな。ミロは身内思想が根強そう。だからカミュが弟子に構うことを複雑に思ってるんじゃないかとか。
カミュ的には、ミロに向けてるものと弟子に向けてるものは完全に別の感情なので、そこに嫉妬するミロの気持ちはよくわかってないといい。

そんなカミュミロが結構好きです)






■パンダ(ミロとカノンと氷河)

「…パンダかぁ…」
珍しく新聞なんかもって、ミロはため息と共にそう吐き出した。は?と返したカノンが上から覗き込む。日本語が縦に羅列されていて何が書いてあるのかさっぱりだ。ただ、中央にでかでかと載せられたパンダの写真で、大体の内容はカノンにも掴めた。
「なんだ、見に行きたいのかお前」
「だってパンダだぞ?中国の珍獣だぞ?」
ミロは何か一瞬でも興味の湧いたものを、自分の興味が失せるまで追いかけないと気の済まない奴である。どうやらしばらくはパンダにうるさくなりそうだ。カノンは眉を顰めた。
「だったら青銅の奴らに連れて行ってもらったらどうだ。日本で見れるんだろ」
そうだなぁ、とミロがしきりに頷く。
「ミロ、動物園にいきたいのか?」
台所からひょいと、皿を両手に持った氷河が顔を出した。勿論皿の上のそれはスイカである。季節はずれじゃないのかなんて質問は、シベリアでノースリーブの男には通用しない。
「俺も動物園がすきなんだ。一緒に行くか?」
提案しながらスイカをふたりにも渡し、自身もひとくちかじる。
「まじか?なら遠慮なく行かせて貰おうか」
さっそくミロもがっつき、カノンもどうだ、一緒に来るか?と問うが、カノンはスイカに手を伸ばしながら首を横に振った。



2011/02/22 (Tue) 8:39

(確か、テレビでパンダ来た!とかいうのを見てから約分後に投稿)





■憮然(シャカとムウ様)

道徳。社会規範。守るべきもの。正義。そのどれもが詭弁に感じられるのは、疑いがあるからだ。見識には必ず個人の偏見が重ねられて、許し、許され、裁き、裁かれる。


「子供だからと何を配慮する必要があるのかね」
血飛沫が飛び散る直前、ムウはとっさに、その場に居合わせた小さな子供を抱きかかえた。シャカが止めを刺したその異形のものは、悲鳴をあげて地面に倒れ伏す。
「戦士となるものならまだしも、何も知らない子供ですよ」
当然の色を込めて返答してやると、シャカはむっとして眉を顰めた。ああ、これは彼お得意の説法が始まってしまうパターンだ。ムウは軽く後悔した。
「私にはわからんな。何れは誰もが知るのだろう。それが早いか遅いかというだけではないか」
だが予想に反し、シャカは淡々とそんなふうに吐き捨てただけだった。不機嫌なままつかつかとムウに、正確にはその腰あたりに抱きついたままの小さな子供に歩み寄る。
「ムウに感謝するのだな」
慣れないのか、かなり乱暴にその頭を撫でて髪を乱し、それを意にもせずふいと立ち去ろうとしていく。ムウはやれやれと溜め息を吐いた。

あれにもこれにも文句をつけるくせに、何を否定したいわけでもないのだ。だから厚顔無恥だとか言われるのですよとは、伝えても仕方ないことだろうが。



あれもあれなりに学んではいるのだろう、恐らく。


2011/02/23 (Wed) 0:31





■被災(カノン)

住む場所を、食べるものを。生きていくために必要なものを求めるのは生き物として当然のことで、そこに善悪道徳の思想が入り込む余地などないはずなのに。人間ってのは厄介だ。容易く獣に堕ちるには、まだ足りない、まだこの下があるという。
震えてうずくまるものに柔らかな毛布を与えて、水と少しのパンを渡す。
傍らのからだの、土に汚れたその頬を拭いながら、外套を身から剥がして上に被せた。瓦礫の山を掘り起こす人々に紛れて唇を噛む。何に悲しんで、何に喜べば良いのか、それは自分だけでなくて、誰もが思うことであろう。特別なことではない、たったそれだけのことが見苦しくもこの喉を痛めつける。

必死にどこかへと腕を伸ばすものたちを目の前に、いったい、どれだけの声が響いただろう、俺が淵へと追いやったものたちは、その中に沈み眠りにつく間際、何を求めただろう。そんなことばかりを考えて、自らの薄情さをこれでもかと言うほど詰りたくなる。そう、俺には彼らを祈る資格など、一片たりともありはしないのだ。


2011/02/23 (Wed) 10:23

(奇しくもリアルタイムになってしまってわたしはショックを受けた。)





■ただいま(ロス兄/ロスサガ)

アイオロスが失踪して一週間。はじめはいつもの放浪癖か、と軽視していたのだが。執務室の机上に積み重なる書類にそろそろサガの胃が痛みはじめるかという頃。それはひょっこりと、まるでちょっと任務から帰ってきましたと言わんばかりの調子で白羊宮の前に姿を現した。

「お土産買ってきたぞ!」

どこまで行ってきたのだろうか、見当もつかないようなものばかりが、その背負った鞄の中からぼろぼろ出てくる。

感嘆の声をあげるミロや吟味をはじめたカノンの傍らでサガは、屈託なく笑うアイオロスを見つめながら静かに拳を震わせていた。溜まる仕事にストレスと若干の殺意を抱えながらも、それでも僅かに戻らないアイオロスを心配していたのだ。なのにこの男は。へらへらと、嬉しそうに、土産まで携えて。


徐にアイオロスに歩み寄ったサガは、そのまま流麗な動きで震えた拳を振り上げ、その頬を殴り飛ばした。



2011/02/25 (Fri) 20:51

(遠出記念というか、受験で遠くにったので。放浪癖持ちなロス兄)





■さむいね(ラダカノ)

寒かったので。

身をできるだけ縮めて、熱を逃がさないような体勢になろうと、カノンは毛布の中でもぞもぞと体を動かした。少しはみ出していた人差し指の先が冷たい。あまり気に留めていなかったのだが、改めて触ってみると他の指との温度差は歴然としていた。カノンは更に身を捩って毛布の中へと潜り込む。

「…大丈夫か?」
肩を揺さぶるものがあった。首を捻り顔をあげると、覗き込む目があった。ラダマンティスだ。カノンはまばたきを繰り返して目を擦る。寒さのお陰で眠気などとうに覚めていたが、わざと起こされた様を装った。
「大丈夫か?」
もう一度、ラダマンティスが尋ねてくる。
「何で」
「寝返りばかりうっているだろう」
寝返り?
「煩かったか?なら悪かったな」
実際は寝返りをうっていたわけではなかったのだが、落ち着きなくあったのは事実だ。それに同じ寝台の上にも居ないのに、横になっているカノンの様子を、同じく横になっているラダマンティスが詳しくわかるはずもない。
「いや、それよりもどうした?眠れないのか」
「…寒くてな」
「寒い?」
聞くやいなや、ラダマンティスはいそいそと自分の寝台へ向かい、毛布をとってカノンに被せた。
「さんきゅ」
ちょっと笑いながら、冷たい指で眉毛に覆われたその眉間を小突く。一瞬、顔をしかめながらもいつものように、人差し指だけが冷えたその手を握りしめてきた。
「おまえあったかいなぁ」
ようやく、とろりと眠気がやってきてくれたようで、カノンは瞼をおろしてそれを待つ。



2011/02/27 (Sun) 14:38

(遊柳は一人部屋なんですが、ホテルとかの二人部屋って凄い相手がもぞもぞしたりしてるの気になるなぁと。それだけの話)
(これは添い寝させるべき?と思いましたがラダマンティスに限って添い寝はねえな…ということでこんな感じ。慢性的なラダカノ不足です)