すぎなおさんのリクエストで、カミュミロ。
「なんのはずみかミロへの思いのたかが外れた和菓子と、びっくりしたけど久々だしたまにはこういうのもいいなあのミロ、のエロ」
・・・で御座います。
例の如くそんなにえろくはならなかったのですが、やってますので注意です。








































ちったぁ自重しやがれ!と声を荒げられたら、幾らカミュでも考えざるをえまい。カミュはミロが其処にいるならいつでもどこでも愛し合っていたいのだが、それが周囲の迷惑なると、デスマスクはそう咎めるのだ。一体いつ自分とミロが他人に迷惑をかけたと言うのだろう。愛し合うことは個人と個人の問題であって、例えそれが親しき友であったとしても何ら関係はないはずである。カミュは腕組みしながら考えた。実に真剣な面持ち悩んだ。











せっかくシベリアから帰ってきたというのに、カミュはその事で頭が一杯で、ミロに会いに行こうと思う気にもなれない。カミュは、理屈抜きにして真っ直ぐな愛情を、嘘偽りなくミロに捧げていると、誰に宣言したわけでもないが自負している。何かわだかまりがあるままミロと過ごすのは実に忍びない、ましてやそれが『貴方達が愛し合っているのに大変迷惑しているのです、自重してください』なんて内容なのだから尚更だ。一体何がいけないのか、思い当たって解決しなければ、ミロと愛し合うことは許されない気さえする。



カミュはすくっ、と椅子から立ち上がった。床が滑らず椅子が倒れる。こうなったら徹底的に解決するしかあるまい。自分はミロを愛しているのだ。



カミュはしっかりとした足取りで宝瓶宮を出た。そのまま十二宮をくだり、天蠍宮も素通りして聖域を抜ける。そしてひとり、人々で賑わう街へと繰り出した。



















街。そこは確実に他人の存在を意識できる場所。家の中以外は全て公共の場であり、人目というものを嫌というほど感じさせる、考えようによれば実に恐ろしい監獄である。
此処で1日過ごし、他人の迷惑となる行為について考えるのだ。もちろん、カップルを中心に。そのため雑誌などでデートスポットと名高い場所をわざわざ選び、そこを中心に調査することに決めた。カミュは通りを歩き出す。その視線はあらゆる通り過ぎる人々を見る。






一方、ミロはのんびり昼頃近くに目を覚まし、のんびり身支度をし、うきうきしながら十二宮の階段をのぼった。久しぶりにカミュが帰ってくるとは昨日聞いた。少々早足に宝瓶宮まで駆け上るも、そこに宮の主の姿は見当たらない。
「あれ?」
きょろきょろと中を見回し、小宇宙も探るが気配すらない。毛布をめくったりゴミ箱を覗いたり使われていない冷蔵庫の扉をあけたりしてみるが、当然の如く、そんなとこにいるはずもない。
「どこへいったんだ?」
リビングの椅子がひっくり返っているのを眺めながら、ミロは首を傾げた。





カミュは無表情のまま、通りを宛てもなく歩いていく。すれ違う幸せそうな男女。固く手を結び合うものや、物陰でどさくさに紛れて口付けを交わすもの。一口にカップルと表しても色んな人がいる。当たり前だ。こんなに沢山の中どこを眺めても、カミュは自分とミロと同じどころか、似たようなものたちも見つけることができない。
(わたしたちはこんなに人で溢れた街中で、手を繋いで歩くなどという迷惑な行動はとらんぞ)
甘い口付けだって、そんな物陰に隠れてこそこそなどしない。買い物に付き合って!と男の腕を引っ張る女に困った顔をしながら引きずられていくのも、自分たちでは有り得ない。ミロは買い物に付き合えなんてカミュには言わないし、そもそも折角ふたりでいるのに買い物に行くなんて勿体が無さ過ぎる。

カミュはむしろ段々苛々を募らせた。見せつけられているのかそれとも隠したいのか、もどかしい数多くのカップルを前にして、カミュは急にミロに会いたくなった。そういえばシベリアから戻ったのは夜中で、聖域にいるというのにミロを一度も抱き締めていないのだ。なんたることか!

カミュは一度ぴたりと足を止めて、街の音を耳に入れる。普段ならばこの賑やかさもひとつの情景として楽しめるというのに、今は全く楽しむことができない。こんなものよりもミロの嬉しそうな声が聞きたい。ミロの口から自分の名前を聞きたい。






あくまで表情だけはクールを装ったまま、カミュは踵を返した。人々の間を絶対零度のシカトで抜け出し、来た道を戻る。聖域に辿り着いたカミュに、すれ違う雑兵が挨拶をするも完全に気付いておらず、また妙に冷えた彼の周囲の温度に何かを感じ取ったか、誰もロクに近付かない。

そのまま十二宮の階段を上り始める。天蠍宮を覗くも人の気配がしないので、あっさり素通りして迷いなく自宮へと進んだ。






「あ、カミュ!」
蹴倒された椅子の前で首を捻っていたミロの背後から足音が聞こえ、勢い良く扉が開いた。抑え切れてない小宇宙でカミュだとわかっていたミロは、表情を明るくさせてそちらを振り向く。扉を開いたところで仁王立つカミュに不審さのかけらも感じ取らずにばたばたと駆け寄った。
「おかえり!どこへ行っていたんだ?」
実に嬉しそうな声でそう口にしたと同時に、胸の前で組まれていたカミュの腕が、すっ、とはずれ、ミロの肩をガシィッ!と掴む。
「…カミュ?」
「ミロ、聞いて欲しい」
カミュはじっとミロの目を見つめた。
「わたしは思うのだ…人と人とが愛し合うには何かが必要か?その当事者同士が共に居ること以上に何かが必要なのか?誰もが愛を求め、愛に生きる中で愛し合うものたちが愛し合えない状況があっていいのか?」
「は?」
「確かにわたしたちは他人と関わることなく生きていくことはできない…多少は他人の目を憚り、他人に配慮をするべきだろうことはわかっている…!しかしわたしは愛しいものは愛しい。その心を偽りゆくのはやはり無理だ」

ミロは口を半開きにただ唖然とした。カミュが宇宙語を喋っているように思われる。何の話なのだかさっぱりわからない。

「…ええーと」
必死に頭を整理しようと試みるも、つらつらと自己完結的に並べられたカミュの一方的な会話内容からいまいち意味が汲み取れず、ミロは頭を掻いた。
「その、つまり…どういうことだ?」
「ミロ、おまえを抱きたい」
「ぶっ…!」

面食らってる間にずんずんとカミュはミロの肩を押してソファーの前まで移動させている。
「ま、まてまてまて!一体何をどうしたらそうなるんだ!」
「何をどうしたらも何も、そんな話しかわたしはしていない」
嘘だろ!?とツッコミがしたいが、カミュのことだ、多分ミロが理解できなかっただけで実際にそんな話しかしていないに違いない。まだ面食らったまま戻ってこれないミロは容易く後方のソファーに押し付けられ、カミュに乗り上げられた。
「ミロ、わたしはお前を愛しているのだ」

焦ってカミュの腹を蹴ろうとしたミロだったが、そう囁かれて抵抗が鈍った。別にカミュとするのが嫌なわけではない、それは決してない。ミロもカミュが好きだ、愛している。またミロは『お天道様が見てるから…!』なんて想像力豊かに恥じらう人間ではないし、とどのつまり、びっくりしたのだ。ミロは不測の事態に弱い。
カミュの冷えたてのひらがミロの服の中に侵入してきたあたりで、まぁいいかとミロは抵抗を諦めた。普段ならもう少し粘るところだが、しばらく会っていなかったことだし、カミュの(ミロからすれば)少しの勝手ぐらい許してやろう。そう思っておとなしく身を委ねた。

カミュの手は何処か忙しなくミロの胸を這った後、何処か急かすようにミロの下半身へともっていかれる。布越しに手を当てられて思わず声を洩らした。
「ミロ」
下を脱がしながらカミュはミロに口付ける。そのまま取り出した中心に手をそえて擦り始めた。
「う、ぁっ」
身を捩るミロをもう片方の腕で押さえながら、カミュは更に手を動かすが、何を焦れたのか、強く指で挟んでミロを悦ばせながら、カミュは押さえていた片方の手の指を舐めた。十分に唾液を乗せると、ソファーに倒れ込むミロの片足を抱え上げて秘奥にその指を持っていく。
「…えっ、ちょ、いきなり?」
僅かに快楽に熱っぽくなりはじめていたミロも思わず我に返ってしまう。いつもならカミュは、かなりというか多分相当、前戯に時間をかけて散々ミロを焦らしてから挿入をする。だからいつも性欲的には同じぐらいのものがあってもミロの方が疲労感がひどいのだが。さっきから妙にカミュが落ち着かない。
「すまないミロ、可愛がってもやりたいのだが、今はお前と繋がりたい」
低い声が耳元で響く。言うや否や、指がゆっくりと中に入れられ、浅くかき回される。ミロの体が驚きと同時に跳ねた。そして更に奥へ、奥へと差し込まれてミロは喘いだ。
「ぁ、かっ、カミュ、たのむちょっとゆっく、りぃぃっ」
「すまないミロ」
「うあっ」
急いたようにカミュの指が動くから、ミロも息つく暇がない。抜かれた指の代わりにカミュのものをあてがわれる。既に肩で息をするミロは唾を飲んだ。期待半分、あまりに馴らされていない為に恐怖も半分。
「ミロ」
「…っん、く、あああっ」
「愛している、ミロ」
力を抜くのに必死で返事ができない。うっすら開いた視界に映るカミュが愛おしそうにミロを見た。
























ふと窓の外を眺めると、既に日が傾いていた。ミロは腰をさすりながらソファーから立ち上がる。この気だるささえ無ければいいのになぁ、なんて考えながら、水を喉に流し込んだ。



中途半端に着衣したまま致してしまったので、一足早く復帰してシャワーを浴びたカミュは、ミロの替えの服を持ってこようと宝瓶宮を出て階段を下ろうとした。すると階段の途中で、座り込むシュラ、腕組みをして立つアフロディーテ、しゃがんで溜め息ばかりついているデスマスクと遭遇した。

「どうしたというのだ」
この三人が共に居ること自体は珍しくないが、こんなところで集まっているのは流石に不審だ。

「ああ何だ、終わったようだぞ」
下りてくるカミュの姿をアフロディーテが一瞥して、そのままカミュの横を通り抜ける。暗い表情で立ち上がったシュラも、無言でその反対を通り抜けた。最後にデスマスクが立ち上がる。
「いったいなんなのだ」
「…あのな」
同じように通り抜けようとする間際、デスマスクは疲れた顔で心底不思議がるカミュを見て、やはり深く溜め息を吐いた。
「…ドアぐらい閉めろや」



階段をのぼっていく三人の後ろ姿を追いながらカミュは、つい昼頃まで頭を悩ませていたデスマスクの『ちったぁ自重しやがれ!』という言葉を思い出していた。








愛情注意報




実にやっちまった感のある妙なカミュミロに仕上がりました。てかやってるところ少なくてすみませ…!(チキン)
リクエストありがとうございました!