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ふと突然視界が開けた。厚い雲が空を覆っているのが見える。その合間から日が差しているのも鮮明に。あれ、天からのお迎えかなァ、なんて考えるほど自分が落ち着いていることを佐助は知った。苦笑する。もちろん身体は動かないし、腕も、指一本も動かすことはできない。かろうじて口は動いたが、動かすたびに血が嘔吐のように逆流して来るから辛い。生生しく「死」を感じる。
厚い雲との間にひとつ顔が現れた。茶髪に赤い鉢巻、今は返り血を浴びて更に真っ赤だ。そこで佐助は少し目を細めて、あぁ、と息を吐くように呟いた。
あんたの夢を見たよさっき。そう発音すると、目の前の赤は少し苦しそうに目を細めた。
夢といっていいのかすらわからなかったが、それは先ほどの空と同様に鮮明だった。そこが暗い川底だと気付くのにそう時間はかからなかった。息はできないし苦しいし、声を出そうとすればするほど肺に水が入る。
だが不思議と上にあがろうとは思わなかった。例え思ったとしてもあがれそうになかった。自分の首を、胸を、手が押さえつけているのがわかった。誰かが、自分を沈めているのがわかった。
息苦しい中、自分の首や胸を掴む腕を見た。そのまま追って水面上にある顔を確認する。見覚えがある、なんてものではなかった。見飽きた、といってもいいほどに見たもの。
彼が沈めてる。自分を沈めてる。
夢の中で頭の中で、ずっとその言葉が鳴り響いていた。
水面が揺れた。水面上の様子はうまく見えない。
しかし、佐助を包んでいた感情は安心であった。
あんたの夢を見たよさっき。そう発音すると血が逆流してきた。喉がごぼりと音をたてて口から吐き出される。だがもうどうでもいい気がした。もうどうせ終わる。終わるからその前にいいたいことを口にしてやろう。全部吐き出してしまおう。憎悪嫌悪なんでもどれでもいくらでも?
「なんて目してんのさねぇ」
自分にはもうどうでもいい、と口にしたように吐き捨てた。言葉は思ったよりも憎らしくなった。
だが目の前の赤は微動だにしない。
「・・・いい加減さぁ、ちゃんと目ェ開けて現実見たら?それとも曇ってんのかなぁ」
なんとも、自分で苛々する台詞だ。
自分の台詞にいちいち突っ込みを入れながら乾いた笑いを出した。
腹から笑った所為か、痛みが酷くなった。死を間近に感じて気分が悪くなる。
「・・・ねぇ」
ようやく赤が動いた。自分の方を向いたことだけわかった。表情は霞んで見えない。
「呆気なくて、悲しくなるね。・・・・笑っちゃうよ、ねぇ」
「あんたに沈められる夢を見たよ」
大事なのはこの感覚だ。あの夢の時、感じていたのは安心だった。
逆に言えばそれしかなかった。懐かしい憎悪も嫌悪も
口にするだけでぶつけられるほどの力は持たずに空気中に霧散した。
差した日が手を引くように
最後の息と共に自然と言葉は零れ落ちた。
「生きていたかったなぁ」
埋没
自分でも「これは酷い」と思いながらもアップ。
大体、約半年以上前ぐらいのものかと思います。
文章構成は意外なほどすんなりいったけど何かがひっかかりまくって改訂しまくってありました。
・・・というか、本当にすみません。
いつか佐助ファンに本気で後ろから刺されそうです。