every30minuteログ 軌跡3

※非常に雑食カオス無節操です
※大した説明事項もなくむちゃくちゃにつっこんであるので注意してください





■レコード(閃・エリマキ)

部屋の戸棚にずらりと並べられた、数えるのも億劫になるレコードの数にマキアスも流石に目を丸くするしかない。エリオットとは、寮で互いの部屋を行き来することもそんなに珍しいことではない。寮の棚にもそれなりの数のレコードがあったと記憶するが、それでもこんな棚ひとつ埋め尽くしてしまうほどではなかった。マキアスにも一応音楽の嗜みがある。帝都に住んでいればわりと日常的に触れる機会も多く、特にマキアスは帝国歌劇場の歌姫ヴィータ・クロチルダのファンを自認しているだけあり、勿論エリオットのようなプレイヤー側としての専門的な知識はないにしろ、自分の幼いころに流行っていたレコードの名前や最近の主流程度のことは把握している。
それにしても凄まじいなとぼやくように言えば、引かれると思ってたよとエリオットの困ったようなしかしどことなく嬉しそうな声がした。確かに、驚きはしたが。好きなんだから仕方ない。仕方ないな、と眼鏡をわずかに押し上げて言えば、うん、好きなんだよね、どうしようもなくね、と。感慨深げな指がそのジャケットの表面をなぞった。


2014/01/24 (Fri) 6:34




■歯型?3(閃・ユシマキ)

盛大なため息とともに、足を出せ、みせてみろと尊大に言い放たれてついそのままの状態から目の前の男を睨みあげてしまった。右足首は酷い鈍痛を訴えており、立ち上がることすらままならないし、それなら当然逃げることもできない。男が近づいて無遠慮にそこに触れようとすることから、腕を軸にして後ずさるくらいが精一杯の抵抗だった。男があからさまに不愉快だと目を細める。わかっている、心配なんて感情はこれっぽっちもないだろうが、男が素直に申し訳ないという気持ちを持ってそんなことを言い出したのだということはわかっている。だが。
「僕は以前、旧校舎で怪我をした君の手当をしたことがあったな?」
「…あったな、不本意ながらな」
「……また噛みついてきたりはしないな?」
「何の心配をしているんだ貴様は」
「どうでもいいことじゃないぞ!あの歯型、結局一日ずっとついたままだったんだからな!」
二度目の盛大なため息が聞こえた。その次の瞬間には痛みのあるあたりに手が直に触れた。そのままでも十分痛いのにそこを掴まれて持ち上げられて、悲鳴をあげそうになって寸で堪えた。男は腫れている箇所を確かめてもう片方の手でアークスを開く。…勿論ここは、学院の本校舎、一階と二階を結ぶ階段下だから、エネルギー切れなんてこともない。今度は持ち腐れにならなかったなという呟きが耳に届く前に、腫れた箇所は柔らかい光に包まれた。


2014/01/24 (Fri) 6:47

(意地張ってるのはどっちも同じだけどユーシスの方が凶暴そうだなとかいうだけの話)




■理屈(閃・リィンとマキアス)

いつも周囲に人が絶えないわりに、ひとりの時間を妙に大切にするやつだとは思った。下校中、もうすぐ日も落ちるというのに釣り道具を一式持って街を流れる川でのんびり釣りをしているのを見かけたときは、声を掛けたが、それ自体はきっと何でもないことだと思いつつもやはりひとりで糸を垂らし、水面を眺めている姿はなんとも言えない。それを破ってほしいのか、ほしくないのか。
自分は正直そうやって人の意図を汲んだり察したりするのは得意じゃない。理屈で考えてしまうからだ。実際に、自分が理屈で物事を推し進める機会がどれほどあるのかを考慮すれば明白であるようなことも、外部に存在すると途端に頭で計算をしてしまう。そうではないのに。
釣りをしている彼に声をかけたとき、マキアスもやってみないかと冗談めかして言われて、いいや遠慮しておくと返して、それっきり。獲物がかかるのをじっと待っている彼に複雑な思いを抱くのは、理屈でわかったことを伝えられない自分へのあてつけなのかもしれなかった。


2014/01/24 (Fri) 7:12

(リィマキって特に興味はないんですけど、だからこそわりとマキアスはリィンのことわかる瞬間がありそうだなとおもいました)



■星の光(閃・トワ会長)

星を見上げて帰った夜は、独りだという寂しさもなかった。会館を出て、校門が閉まる前に慌てて飛び出して、ふと一息吐いて顔を上げると広く輝く光のもと。
冬のとくに寒い日は、ほんの小さな光も届く。普段は見つけられないものを、見つけたときの感動は大きかった。あれだよ、あれ、いつもは少し見えにくいけど、今日はよく見えるんだ。誰かに言おうとして、誰もいなくて、少しさびしくなっても、まだ怖くはなかった。明日、やさしい友人たちに教えよう。そして一緒に見に行こう。希望と言うにも夢と言うにも足るような、足らないような拙い思いは、しかし今晩ひとりきりで眠るための確かな理由にもなるから。

(ほんのわずかな明かりの星を見つけるように、今夜その小さな光を見つけたとして、私はきっと、また独り)


2014/02/10 (Mon) 10:59




■そのひととそのひと(閃・ガイユシ)

背中から覆いかぶさってきた熱を、振りほどくのはもう億劫だった。どうせ他意はない。開き直れば幾らも堂々とした様子で、少し首を捻って後ろを見れば、瞼も閉じずにじっと前を見据えている。どこを見ているのかもわからない。男のことは何もわからない。わからなくていいと思っていたけれども、それで本当に「いい」のかどうか、定かではないし不安定な気分であるのも確かだ。
優しい体温だった。背中は重くもなかった。あやすように腕を伸ばしてみて後悔した。絡め取られた掌も心地は良いが、それは甘ったるい感情から来るものではなく、男の好奇心からくるものだということだけは何故か理解していた。何もわからないのに、そこだけは強く知っているのだ、おかしな話だが。

風のようにまとわりつくなら、去るときも風のように過ぎ去っていくだろう。なのに大地のように支える力となって、時に大きな振動を呼び覚ます。そこで翻弄される存在になるのは不本意だが、少しだけ思うところもあった。体を捩って、面と向き合う形になる。その目を真正面から捉えることはまだできないが、もう一度腕を伸ばしてぐしゃりと頭に指先を這わせた。柔らかい髪の感触と、確かな形が伝わるままに掌全体で撫でると、男が首を傾げたのがわかった。
自分にはそれを回避する術などないが、それを受け入れて生きるという選択をとることくらいは、きっとできる。


2014/02/10 (Mon) 11:08

(ガイユシについて毎日必死こいて考えてるんですけど未だにびっくりするくらいよくわからない、という感覚が顕著にユーシスの感覚にリンクしてしまっている気がする)




■みずのなかのまもの(閃・クロウ)

水面下に浮かんでいる。
照りつけてくるだけの太陽がいつも嫌いだった。こっちの都合なんて考えてくれちゃいない。そんなもののご機嫌を窺って生きてなんて居たくないのに、ご機嫌斜めな太陽が隠れればぼちゃんと激しい水滴が水面を打つ。
勝手な奴め。
吐いた悪態だってどうせ届かない。あいつは俺の、水面に映る歪んだ姿しか見ていないからだ。中まで潜ってくる気配はない。それで有り難い。こんなところまで太陽が忍び込んできたら、その熱できっとここは干上がってしまう。救命具を持ってこいよ、投げ入れて見せれば少しは顔をあげてやる。でも掴んでなんてやらねえよ、俺はここに住む魔物、知ってたか?息ができるんだ、俺は、此処で、疑いなく!


2014/02/23 (Sun) 15:30

(Cさんについて考えようとして何かかこうとしてかきかけて忘れたとかいう)




■お酒の話1(閃・ガイウスとサラ))

酒瓶で躓きそうだ。慎重に歩を進めてロビースペースの棚に手を掛ければ、ソファーに座ったまま豪快に酔っている女教官が、くるりと首を捻ってにたりと笑い、手にしたからっぽのグラスを揺らした。
「ガイウス、あんたも飲んでみる?」
二、三度瞬きをしてから、遠慮しますと返答した。不満そうにもう一瓶、器用に栓を抜いてなみなみとグラスに注ぎ、一気に飲み干した彼女から漂うアルコールのにおいが、ほんのすこし古い記憶を呼び起こした。はじめて酒を飲んだときの記憶だ。といっても一口裾分けをもらっただけなので、飲んでいないのと殆ど変わらないようなものだった。監視塔まで食材を届けに行った際、みんなには内緒だとそこに務めていた兵士のひとりがこっそり栓を開けて水筒に注ぎ、飲ませてくれたのだ。ほんの一口だった所為で味は全くといっていいほどわからなかった。ただ無機質な水筒の中から漂ってきたアルコールのにおいだけ、今でもしっかりと覚えている。


2014/03/03 (Mon) 14:51




■カナリヤ(閃・リィンとクロウ)

うたをわすれたカナリヤは
うらのやまにすてましょか
いえいえそれはかわいそう

「クロウ?」
歌声に気付いて顔を上げる。きょろきょろと辺りを見渡している。俺はそのすべてに不誠実を貫いたまま、声を上げ続けている。
「そこにいるんだろ、クロウ」
さあ、そこにいるんだろうか、俺は。お前が見ているのはクロウってやつの影かもしれないし、俺が見ているのはリィンってやつの影かもしれないって、考えたことあるか?ないだろうな。はじめから本物を内に持たないお前が、他人の本物と偽物を見分けられる筈がないんだ。
そう俺は信じてる。
「なぁ、それ何の歌なんだ?」


2014/03/07 (Fri) 15:19




■バンダナ先輩さんと眼鏡後輩くん1(閃・クロウとマキアス+リィン)

「マキアス君マキアス君、珈琲くれ、珈琲」
「じ、自分で淹れてください」
「見ての通り俺様は今絶不調なんでな?」
「日頃不摂生だからですよ」
「第三学生寮はいいねえ、美人のメイドさんがついててくれれば栄養失調でベアトリクス教官に呼び出されるなんて経験、したことねえだろ?」
「……先輩はあるんですか」
「お?聞きたいかねマキアス君。これにはふか〜〜〜いワケがあってだなぁ」
「馬券の予想ゲームして、負けて昼食全員分キルシェで奢ったからミラがなくなったんだろ?それ前に聞いたぞ」
「うぐっ、リィンお前いつからそこに!?」
「いやついさっきだけど……マキアス、これ借りてた本」
「あ、ああ。わざわざすまないな」
「構わないさ。あ、あとクロウに珈琲はいれてやらなくてもいいぞ?」
「……は、はぁ」
「お前なー」
「さ、さすがに君はちょっと砕けすぎじゃないのか……?」
「はは、冗談だって。ふたりとも仲が良いんだな」

「…………」
「……やぁやぁマキアス君」
「……なんでしょう、先輩」
「俺たちもしかして舐められてんの?」
「さ、さぁ……リィンに限って意図的とは思いませんが……ってなんで僕まで頭数に入ってるんですか!」
「うるせ、旅は道連れ世は情けっていうだろ!」


2014/03/07 (Fri) 15:40




■波と面(閃・クロマキ)

どこまでも楽しげな人の波だ。一気に呑まれた。フィーは、エリオットは、アリサは……クロウ先輩は。姿を確認しようとして、身体を押されて、耳を貫くけたたましい音に目を見開く。
楽しげなのにどうして、こんなに恐ろしいのだろうか。熱狂が生み出す圧力に負けそうになる。この渦の中に、例えば自分も飛び込んだとして、その時自分もこんな風に楽しそうな顔ができるのだろうか。あるいは。
背筋に冷たいものが走る。
誰もかれもが、仮面を被った魔物に見えて、思わず足下に目を凝らした。


「おいおい副委員長君」
そっちじゃねえよ、という声と共に掴まれた二の腕が、一瞬大きく震えた。追いつかれたと思って顔をあげると、普通に見知った顔だった。
「へんな顔して、どーしたんだ?」
「い、いえ」
「迷子になりそうで怖いってか?みんなで手でも繋ぐかねえ」
「そ、そんなこと言ってませんよ!」
「言ってなくても顔にかいてある」
「えっ」
「おらおらしっかりしろ。でないと、また呑まれちまうぜ」

人の群れに。

波から離れた一角から、エリオットが手を振っていた。アリサが封筒に入った紙を上から下まで確認している間に、フィーが辺りを見回している。腕を引かれたままそこに躍り出た。振り返って仰いだ波の中に、仮面は、ひとつも転がっていない。


2014/03/07 (Fri) 16:02




■転倒(閃・ガイユシ)

持て余していたのは幸福でも、恵まれた環境でもない。むしろ享受しきって慣れきったからだの方だ。似合いの言葉のひとつでもかけてやれたらいい。そう思っても何一つ紡げない唇ばかりに気を取られて、今日も盛大に転ぶ。周りに誰も居なかったことを喜んでいる。

どさどさと、重たい音と振動が建物全体に響いた。古い学生寮に今、己と向かいの男以外の人間は居なかったことが幸いだろう。何があったかと勘繰られるのは御免被りたい。急ぐことも慌てることもなく、互いにしゃがみこんで廊下に散らばった数冊の本を拾い上げた。
男の腕と、己の腕に、それぞれ抱え上げて、わるかったすまなかったと言い合って、奇妙さに心中だけで首を傾げる。すれ違う。するとすぐに背後から、思い出したように声がかかった。
教えてほしいことがあるという言葉を聞く。


2014/03/31 (Mon) 13:46

(鬱陶しい思慕も妙な下心もないことに疑いはないことを確信しながら、そこに自身が埋没してはならないことを自覚しているユーシスさんとそんな面倒なことは一切考えてないガイウスさんなガイユシが多分デフォ)




■零(零・キーア)

例えばたった一瞬の油断や隙で、日常の中でも死と隣り合わせだ。みないふり、みないふり。ラインフォルトの高級車が大通りを横切っていく。みないふり、みないふり。
欺瞞はいつか破れましょう。真実でないものは、いつか真実の前にひけらかされて、その狡さを裁かれましょう。しかしその日はいつくるのだろう。みないふり、みないふり。

時間はぐるぐると巻き戻り、見たこともないほど天高く建てられたガラス張りの建物が視界に映る。胎動する内部。鉄さびのにおいが充満する足下。それでもみないふり、みないふり。望むべくは、もっと先。

大きな飛行船。硝煙と襲い来る気圧の波。ああ、みないふり、みないふり。両目を小さな手で覆って、がらがらと耳障りな車輪の音。爆発音とともに破壊された小さな時計塔の下で、誰かがひとり、息を引き取る気配。

小さな嗚咽と共に目を覚まそう。すべての欺瞞は、この瞼の裏にある。



2014/05/01 (Thu) 12:29