every30minuteログ 軌跡1

※非常に雑食カオス無節操です
※大した説明事項もなくむちゃくちゃにつっこんであるので注意してください




■そう、それで(空)

縁というものを信じている。だから一度目、二度目があれば、三度目を期待してそれを待つ。来なければ、それは縁がなかったのだ、名残惜しくても仕方がない、きっと自分を待ってる世界が別にあって、彼女を待ってる世界が別にあると思わなければならない。
まじないや占いの類、それは信じる信じないではなくて、ある一種の予見を示すだけだと言った彼女はカードを一枚引いた。自分はただいつものように微笑んで、それでもかまわない、縁はあったから、どんな結果になると言われてもやりたいことをするだけだと。だってボクは愛を求めて流離う詩人だから、それがほんとうのすがただからと。

冗談は顔だけにしろと呆れたように笑った彼女の指からカードが離れた。


2012/10/15 (Mon) 21:06

(オリシェラがすごくすきです…)




■花冠(空)

無駄に手先の器用な男は、演奏の礼にと小さな少女から作り方を教わったらしい花冠を、雑草として捨てられそうになった庭の花を使って無駄に作りまくって。もっと早くに察知して怒鳴るべきだった。部屋の床がそれで埋め尽くされる前に。
「やあやあミュラー君、きみもひとつどうだい?」
満面の笑みで最高傑作と自ら謳ったひとつを、少々腕を伸ばして頭に乗せた。何故かそれは、丁度自分の頭に、額よりもわずかに上のところにぴたりと収まる大きさで、それがさも当然というように更に手を動かし続ける男の頭に乗せられたそれも、丁度同じところでうまくおさめられている。馬鹿馬鹿しくて怒る気力すら湧いてこなかった。


2012/11/13 (Tue) 8:53

(無駄に器用ってたぶんこういうのを言う)




■こんにちは(空)

「前庭を歩いてきただろう」
にこにこ顔でそう言い当てた男の首筋に顔をうずめながら、なんでそう思う?と社交辞令できいてみた。
「薔薇のにおいがするよ」
「あんたと同じで乙だろ?」
柔らかくて手触りのいい金色を撫でて、あらわになった鎖骨を噛んで、子供みたいにすり寄っても、きっとどこかで諦観がある。もういっそほんとうにひとつになってしまえばいいとおもう。

2012/11/19 (Mon) 8:42




■せんちめんたりずむ(零)

朝は日当たりよく心地よい空気であったのに、少し居眠りしている間に厚い雲が青空を覆い始めていた。このまま雨が降るだろう。寝転んでいるここは屋上、さっさと中に入ればいいのにぼんやりしたままその過程を見つめている。
「ランディ」
階段を駆け上る音と同時に扉が開く。名前が呼ばれる。
「雨、降るぞ」
そんなことはわかっている。見ればわかる。知っててここに居る。
でもそんな情けないセンチメンタリズムは説明したって恥をかくだけ。上から顔を覗き込んできた彼に笑いかけて、そうかそりゃいけない昼寝は部屋でするかなと、ゆっくり体を起こした。頬を冷たい感触が掠める。あと数秒、彼が来るのが遅ければ、きっと親切の声は怒号に変わっていたのだろう。


2013/01/11 (Fri) 22:22




■役者(空)

お前はいつも一言余計なんだ。波風を起こせばそれだけ自分の足場を悪くするだけだろうに。ひとつも堪えた様子も見せず、むしろきょとんと首すら傾げてみせて、男は晴れやかな笑顔を向けた。一点の曇りもないことはわかっているのに、どこにも安心感のない笑顔。

だったら捨て置いていけと、孤独な舞台で踊ろうと足を踏み出す。眠れない夜を何度重ねても、きっと後悔などという言葉とはおおよそ無縁で、滑稽さすら感じるような。男の腕を掴みとって、走り出したのは理屈じゃないだろう。

どうせもうどこにも捨ててはいけないことを自分は知っている。

2013/01/21 (Mon) 21:55




■べんきょう(閃)

少し広い机のうえ、両腕を垂れて頬をつけて目を閉じた。すぐに、こらっ、という声がして額に近い場所を何かで叩かれる。億劫だということも隠さないまま顔を少しあげた。
「フィー、ちょっとは真面目にやりなさい」
この間の小テストの点数がよくなかった。このままだと試験に響くからと担当教員から担任に指示があったらしい。自分に負けず劣らず面倒くさそうにやってきたサラは、今机のうえでひらひらと端の方を揺らめかせている紙束を終わらせれば帰ってもいいと言ったが。
「あんたがやらないと私も帰れないでしょーが」
「でもサラ、これわかんなくてもきっと生き残ることはできるよ」
「そういう問題じゃないの」
それに今あんたが居るところは、そういう世界でもないの。
サラの両腕が頭を捉えた。か弱いところはないけれど、女の人らしい少しやわらかい腕だ。ぐしゃぐしゃと髪をかき乱してサラはにこりとらしく笑った。私はそれを目を細めて見つめていた。

2013/10/29 (Tue) 20:25



■本(閃)

貸し出されていた本が返ってきたと、司書の女性がわざわざ教えてくれたのは自分が図書館の常連と化しつつあったからだろう。以前入荷されたのだが、自分が借りる前に誰かに借りられてしまっていた一冊だ。本当ですかそれは今すぐに貸出できますかと嬉々として尋ねて、まだ棚に戻されていなかったそれを受け取った。ありがとうございますと頭を下げると、なぜだかくすくすと笑われて首を傾げた。
「?な、何かおかしいことでもありましたか?」
「ううん、大したことじゃないんだけど。もしかして貴方と彼って仲良しなの?」
「…は?」
示されたのは、本の貸出履歴だった。過去その本を借りたのが誰なのかということがかなり昔の方までしっかりと記入されている。ただそれだけのもの。
「……」
「ね?」
かなり前に自分が借りた本、つい先日まで自分が借りていた本、今日返却した本、そして今回貸出をお願いした本。履歴に存在する自分の名前の前後に必ずアルバレアの文字が並んでいる。この日付の直近さからどう考えてもその名前に該当する人物はひとりしかにない。
思わず、手にした本をまじまじと見つめて苦い表情をした。


2013/10/29 (Tue) 20:43

(なんか、わりと似たもの同士なんだろうなぁって思った)



■続・本(閃)

本なら家に腐るほどあった。時間があるときに読み漁って、都合の悪いものはひとつも置いていないということに気付いてからは街の本屋へ足を運んだ。種類も増えて、内容も多彩にはなったが、やはり都合の悪いものはひとつも置いていないことを知って、こんなところはまだあの家の庭でしかないのだと少し唇を噛んだ。…ここで少し自分が血を流しただけで、きっと頼んでもいないのに騒ぎ立てられるのだろう。

そういえば昔、母が読んでくれた絵本が好きだった。帝国各地に残る伝承などを子供向けに改編したものだ。その基となった話の幾つかは実家にもあったが、学院に来ると帝国のほぼ全土を網羅するような数があり、柄にもなく心が躍った。さすがに片っ端から読みはじめるのは現実的ではないしと気になる地域や内容から手に取り頁をめくる。途中それを専門とする教官の長話に捕まりそうになったりしていると、ある時から隣にひとり増えた。


2013/10/29 (Tue) 21:12

(ガイユシかこうとおもったんだけどなんか力尽きたというか着地点おもいつかなかった)




■歯型1(閃)

「…っぎゃああああッ!?」
思わず挙げた悲鳴がその場に木霊した。左手の甲を押さえて、膝をついたその場から飛び上がり後ろに尻もちをつく。その目の前では、実に、じつに不機嫌そうにユーシスの奴がこちらを睨んでいた。ちょっと待て、そんな目がしたいのはこっちの方だ。
「君は魔獣か何かか!?」
「違うということは見ればわかると思うが?」
いやどうしてそこで偉そうになるんだ。言っておくが、今自分は親切に、…本当に、なぜ僕がこんな男の怪我の面倒など見てやらねばならんのだリィンのやつエマ君とガイウスを呼んでくるといってから時間が経ちすぎだ何をもたもたしてるんだいや確かにここから地上まで戻って帰ってくるのだったらそれなりに時間はかかるものだがそんなことはどうでもよくってとりあえずこの男と二人きりというこの状況をどうにかしてほしいと、そう思いながらもきちんと男の右腕と右足の傷の応急処置を施していたというのに!
「だったら何でいきなり噛みついてくるんだ!わけがわからないぞ!?」
「煩い。文句があるならやってもらわなくて結構だ。傷自体はもう塞がっている」
「アーツで塞いだだけだろう!神経までは戻っていなくてまだロクに動けもしない癖に、文句があるのは君の方じゃないのか!」
「…それが煩いといっている」
左手だけを軸にずるずると移動して一定の距離を置いて何故かふんぞり返る男が、いつもの小憎たらしいただの貴族にもただの手負いの獣にも見えて、やはり苦い表情を浮かべる。
覆った左手の甲をちらりと見てみた。血まで滲んでくっきりと、奴の良い歯並びの形に痕がついている。ああくそ、見たらちょっと痛くなってきた。痛みによる生理的なものですこし涙目になった自分が情けなくて仕方ないが、そもそも人間に噛まれるなんて予想できることでもないだろう。しかもこの位置だと手袋でもつけない限りはこんなにくっきり残った歯型を隠せるわけもない。最悪だ、やっぱりこいつは最悪だと呟きながら眼鏡の下の雫を少し拭った。


2013/11/02 (Sat) 5:31

(ユシマキって色気のない歯型が似合うねと思っただけの話)
(実は長いのも考えてたんだが、噛みつく話だけにそんなにかけてもちょっと困るなと思ったり思わなかったり)




■歯型2(閃)

うるさいと思っていた。

狭量な決めつけにいちいち吠えかかって噛みついてくる声に、いちいち大げさな反応。どれも面倒で仕方なかった。好きになれない。嫌いだというほど気にしたくもない。関わってほしくないのが限りなく本音なのに、関わらざるを得ない状況に持ってこられる。鬱陶しいと思っていた。

けれども静かになられたら、苛々した。文句があるならはっきりと言われた方が気が楽だった。それで自分に非があったなら、改めるくらいの器量は持っているつもりでいたし、それがただの僻みややっかみなら、鼻で笑ってはねつけてやった方がわかりやすい。何か言いたげにしつつもいやいい構わないと黙られる方が、突っかかられるより鬱陶しいことに気付いた。

苛々したまま噛みついた。色気の欠片もない悲鳴をあげられて急激に自分が落ち着くのを感じた。そのまま君は獣かと罵られて尊大さを取り戻した。



でもやっぱりうるさいのは鬱陶しかった。


2013/11/06 (Wed) 9:41

(ユシマキのユーシスはわりと困ったちゃんだなって思った。マキアス相手ならわりと何してもいいと思ってそうな天然)



■処女飛行(閃)

空のうえ、雲のなか、風と共に走り抜ける。カレイジャスには多くの乗組員が搭乗し、それぞれが責務を全うしているのだが、そんな中ひとり甲板でくるくると回るお気楽な男にため息を吐いた。見た目こそ立派な緋色の装束でそれなりだが、こうなってはもう皇族の威厳もあったものではない。今は、他に人が居ないのだけが幸いだった。
いつもなら、お前はいったい今年で幾つのつもりなんだとか、身分相応年相応になってくれとか、お前にとっては後輩にあたる者たちも居るなかでやめんか恥ずかしいだとか、すぐに口をついて出てしまうのだが。今回はため息で済ませる。勿論他に人が居れば強引にでもしっかりさせただろう。
「おや、今日は随分と優しいんだね」
もしかしてようやくボクへの愛を自覚したのかい?などと相変わらず節制のネジがどこかに飛んだ発言が降ってくるが、そんなわけがあるかとさっさと切り捨てた。残念そうな顔をしながらもやはり子供のようにはしゃぐのを止めない男は、ここ最近では一番だと自分の目から見てもわかるくらいに、楽しそうで、嬉しそうだった。
だから、このくらいは許してやりたいと、そう思っただけだ。


2013/11/15 (Fri) 21:40

(カレイジャス処女飛行のときいちばんはしゃいだのはきっとあいつだろうと思って)



■委員長(閃)

「エマ」
「はい、なんですかフィーちゃん…きゃあっ」
振り返りざまに手を伸ばして、両耳にしっかりかかっていた眼鏡を取り上げた。エマは驚いて一瞬目をつぶってしまったみたいだけど、すぐに開いて困ったように手を差し出してくる。
無理矢理取り上げようとはしないところがエマらしい。
「も、もうフィーちゃんったら」
「エマ、眼鏡ないとちょっと別人みたい」
「そんなこと言って誤魔化したってだまされないですよ。ほら、かえしてくださいね?」
ひょいと眼鏡をエマの手から逃れさせてふらふらすると、エマも慌ててそれを追ってくる。捕まったりはしないけど、エマの追尾は正確だったから、ちょっと首を傾げた。

「エマって、これ外しても見えるの?」
マキアスは眼鏡を取り上げたら、見えないのがわかりやすく目標を見外していたのに。
「勿論見えにくいですよ」
「でもちゃんと見えてるみたいに動けるんだね」
「だって、ここは教室ですし、相手はフィーちゃんですし」
その言葉に気を取られてるちょっとの隙に、手をやんわり捕えられてやんわり眼鏡を取り上げられた。
「でもこんな調子でマキアスさんのを取ったりはしちゃだめですよ」
もう実行済みだってことは知らないらしい。でも思った、多分エマはあんまり敵にまわしちゃいけないタイプだ。


2013/11/23 (Sat) 15:05