実習で血塗れの泥まみれの汗まみれになってしまったので、水浴び場で六年生計六人は、数の少ない桶を奪い合いしながら簡単に身体を洗い流していた。
こういうとき、改めて見てみると個性的である。
勿論、全員悲惨な状況であるには違いないのだが、その汚れ方には若干の違いがある。
まず潮江文次郎。
忍術学園一忍者しているといわれるだけあって、彼は優秀だ。返り血をほとんど浴びずに、さらに自分も深手は負わずに。だがその反面、少々いらないところまで気を張る彼は、どちらかと言えば汗と泥の量が多くなる。しばらくその忍び装束は洗濯されて使えなくなるだろう。
立花仙蔵も優秀だ。
しかも彼は得物が火薬である。返り血を浴びることもなければ、自分が傷つくこともない。無駄な動きも嫌う彼は泥と汗すら少量だ。ただ彼の場合、硝煙の臭いが酷く、下手をすればそれだけで相手に感づかれてしまうという危険がある。今回もかなりの火薬を使った所為か、水を二、三回かぶっただけではこの鼻につく臭いはとれない。
七松小平太はとにかく乱暴だ。
忍者はどちらかと言えば最小限の動きで任務をこなすべきなのだが、彼は性なのか、らしからぬ大雑把さである。力と体力が無駄に有り余っている所為で好戦的で返り血が酷い。また派手に動くので泥も汗もとにかく酷い。桶でちまちまと流すよか、川の中に飛び込んだ方が絶対に早いという状態だ。
中在家長次は奇妙である。
無口で無愛想なそのイメージ通りに、あまり動かず的確な判断で任務をこなす。よって滅多に汗はかかないし、泥も特にかぶらない。近距離戦も避けるため返り血もほとんど浴びない。火薬を使うわけでもない。だがその性格からか、使う得物の所為か、自身の傷は他の五人に比べると多く、そういった意味で装束の血が多いのである。
食満留三郎は至って普通である。
それなりに返り血も浴びてそれなりに汗もかいてそれなりに泥もかぶって。ただ彼は共に行動することの多い善方寺伊作のおかげでそれが倍になり、プラスいらない怪我をすることも少なくない。彼の場合、身体を洗い流すために水を被るより先に怪我の消毒と治療をしたほうがいいと思われる。
善方寺伊作は誰もが認める不運である。
前述した食満の献身的な活躍によって彼自身への被害はかなり減っているが、それでも身に降りかかるその不運な事故はさけられない。よって、毎回有り得ないぐらい泥だらけになる。彼は主に医療班なため、このような大人数の場合は、前線に出ることはないので怪我はしないし返り血もない。しかし治療の所為で血がついていないのに血の臭いを漂わせていたりする。これまた特殊なものである。
* * *
この酷い有様で、桶が3つしかないのは痛手だ。
「文次郎、早く一回でも水を頭からかけろ。汗臭い」
「お前こそ火薬の臭いが酷いぞさっきから!それに何故俺にだけ言う。汗臭いのなら小平太も相当だぞ」
真っ先に水を被った立花はその桶にもう一度水を張り、桶待ちの潮江へ予告なしにぶちまける。
思い切り噎せた潮江が立花に怒鳴るが当の立花は楽しそうにしているだけだ。
「長次先に使えよ!傷口洗って先に治療した方がいい」
「・・・・・・・」
「え、何?私の方が早く身体を洗った方がいい?じゃあ長次、上からぶっかけてくれ!長次の方が背が高いからな!」
無言で水を七松の頭から容赦なくかける中在家だが、それをなんともなさそうに受けて、七松は動物のように身を振って水を飛ばす。
爽快感からか、にぃっと笑って御礼にと中在家にも水をぶっかける。そちらも全く容赦がない。
「だ、駄目だよ留さん!まずは傷口を中心に洗い流して処置しよう!ただでさえ失血で貧血気味なんだから・・・」
「それは新野先生になんとかしてもらうからお前が早く洗い流せ。ちょっと擦り剥いただけでもそこから泥が入ったらすぐに膿むから大変なんだっていつもいってるのは誰だ?」
「お願い留さん僕のいうことを聞いて!」
「いつも俺が折れてんだからたまにはお前が折れろよ!」
桶の奪い合いを始めた善方寺と食満は、この中で一番なにやら酷い状態であるのにまだ一滴も水を浴びていない。
互いに譲らず、傍から見たら「そんなことしてる間にふたりともできるだろ」と思うような争いになっている。
そこに立花がふたりに水をかけて終結した。
それぞれの個性を改めて見直して、彼らが六年もやってこれたことを不思議に思うが、しかし納得する。
どつきあいながらそれぞれの部屋へ戻っていく彼らは、凄絶な、実習という名の戦場から帰ってきたとは思えないほど晴れやかな表情を浮かべていた。
忍術学園六年考察
六年が凄いのって、そういうところじゃないかなと思っただけです。
神経が図太いっていうか。
もうちょっとのことじゃ動じませんよみたいな。
考察してたときの名残。
手を振り上げて。自分より少し背の高い彼の頭をぎこちなく撫でた。困ったように見てくる目は無視をして、子供たちが見たら泣いてしまいそうなほどの仏頂面で、躊躇いながら頭を撫でた。利吉は手の温かさを知っている。父も母も、利吉が幼い頃よくこのように撫でてくれた。勿論こんなにぎこちなくはないし、仏頂面などしてはいない。だが撫でられることの嬉しさを知っている。撫でると一口にいってもそこには様々な意味があるだろう。頭を撫でられたら、利吉はそれに笑顔を向けて、もっと利口になろう、そう思ったのである。頭を撫でるというのは、勿論身長のことがあるのだが、子供にするものだ。偉いぞ、または、愛しているぞ、と。利口になろう。それは子供であったから利吉が思ったことである。今だったら、子供扱いしないでください、と少し怒るのだろうか。今、利吉に頭を撫でられて困った顔で目をきょろきょろとさせているこの人は、そうだ、きっとどうすればいいのかわからないのだ。喜べばいいのか、怒ればいいのか、わからないから困っている。何が正解の選択肢かは勿論利吉もわからない。だが利吉は仏頂面を少し剥ぎ取って笑みをつくり、甘えてくださいと要求した。
アンバランサー
利土井って毎回空気がオレンジ色なんだが。
私よく考えてかくよりよく考えないでかいたほうがいいのかもしれない。
つか、多分会話が苦手です。意味のあるつなげ方ができない。
利吉が土井先生に要求するのはなんだろう。まぁだって一応7歳差。
土井先生のほうが遥かに大人なわけでして。
じゃあ利吉がもどかしく何かしたいと思うなら、それかなという感じです。
私の中で教師っていうのはよっかからないイメージなんです。
父が教師なのでそのイメージなんでしょうが、教育の方針とか、生徒との交流とか、絶対にその人の人柄とか素がある程度出てくるものじゃないですか。
だからよっかかったら終わりなんだと思います。そういう人が教師の鑑なんだと思います。
ってすっごい私的意見すぎる。
それを、私によっかかってくださいっていうのが利吉かな。
土井先生にとってはえええええええ無理ですっていうところなんだけど要求してくる。っていう感じです。
だからいつまでももどかしい感じなんだと思います。
ちなみに土井きり親子好きですけど、きり丸は正直土井先生にはいいお嫁さんを娶ってもらいたいと思ってるので別に利吉さんは嫌いじゃないッスけどーみたいです。
きり丸が土井先生に、土井先生がきり丸に、矢印を伸ばしてるとかいうわけじゃなくて、同居の末の種族意識みたいなものですね。
つまり家族です。うちのきり丸は相当土井先生に遠慮がないです。
ぴぃぴぃと泣いていたよ。森の中で木に反響してね、よく聞こえた。場所も何となく目星がついていたから向かうことだってできたような気もする。伊作だったら何も考えずに向かったろうか。留三郎だったら助けなければと走っただろうか。文次郎だったら現状況を把握した上で助けに走っただろうか。小平太だったら興味を持って向かったろうか。長次ならば万全の態勢をとって向かったろうか。でも、でもなぁ、私は残念ながら伊作でも留三郎でも文次郎でも小平太でも長次でもなかったのだ。よく聞こえていたよ。ぴぃぴぃとな、まるで私を呼んでいるかのようにはっきりと。森の中はそれだけ静まり返っていて。屍の山が築かれていたことは、まぁ仕方ない。問題だったのは私の姿だ。手だけ見て諦めた。すまんなとも言わないで、屍の上を帰ったよ。私以外にも人が居たことを、あってはならないが、祈っている。それだけは自由だと思いたいさ。つまらない感傷だ。ぴぃぴぃと、ぴぃぴぃとなぁ、まだ耳に聞こえている気がする。
木霊
仙様。つか総じてテンション低くてすみません。
何か別に意識したわけじゃあないのですが、みっつとも子供って言う単語イメージですね。
不思議だ。子供って好きです。今は子どもっていう表記じゃないと差別っぽいから駄目っていいますが、私は子供表記が好きです。別に子供は大人の供って思ってるわけじゃなくて。
仙蔵が一番そういうこと気にしそうってなだけです。
六年生には夢がつまっている。
このとき一緒においていたものがどれも「子供」がテーマっぽかったようです
留さんは今日も忙しそうでした。
昼近くになって、一緒に昼ごはん食べようって言いに行こうとしたら、縄梯子とか木材とか運んでいるところを見てしまいました。
急いでいるみたいだったから話しかけられなくて、ひとりで食堂まで行きました。
食堂には下級生や同級生がいたので話ながら食べました。
長次が食べたりなさそうなしんべえに、おかずを分けていたのが印象的でした。長次は優しいなぁ。
乱太郎もほしいかい?なんて冗談で聞いてみたら、伊作先輩遠慮せず食べてくださいだって。
その光景を見て仙蔵がおかしそうに笑うから、ちょっとだけむっとしました。
面白そうだなんて言った小平太は、金吾や滝夜叉丸に大量に押し付けていて、流石に止めました。
留さんはなかなか来ませんでした。というか、最後まで食堂に残っていたけど来ませんでした。
授業が始まってしまうので仕方なく食堂を後にしました。
留さんは今日も忙しそうでした。
夜、長屋に戻って本を読んでいると留さんが帰ってきました。
お帰り今日お昼ごはん食べた?真っ先にそんな言葉をいってしまってちょっとばつが悪くなりました。
でも留さんはちょっと意外そうな顔をしただけで、すぐに食べ損ねたと一言言いました。
昼忙しそうだったの見たから。そう付け加えると留さんは、なんだかとても嬉しそうに笑って、もしかして待ってくれてたのか、ありがとな、なんてうわあ恥ずかしいなぁかいてて恥ずかしい。でもそういってくれました。行ってやれなくてごめんな。そんなことないです全然そんなことないです。他愛もない話をしてその日は終わり。
ありがとな、だって。うわああ恥ずかしいなぁ。
ごめんな、だって。
もうこの世界のみんなが留さんを好きになればいいのに!!
世界が彼に優しくあればいい
伊作うぜえええええええええええ
すみません。何か、突然頭の中に食満に「ありがとう」「ごめんな」って言われて嬉しくて畳の上をごろごろする伊作が出てきたので・・・・。
伊作は単純だといいな。
「いや、おかしい。今のは何かの間違いだ」
「何がだ。明らかに失敗だろうがそれは」
「さっきのはお前のそれが暴発したんじゃないか?」
「いや俺は見ていた。さっきのはお前のそれだ。」
「…いやないないない。この私が火薬の調合を間違えるなど」
使っていた壺、どちらも焼け焦げ。
中身も飛び散り混ざり合う。判断不可能。
「もうそんな状態だし、どっちの所為かなんてわからないだろう?不毛な責任の押しつけ合いだよ」
「いやこれは重要なことだぞ。火薬を暴発させたのが私かこいつかでこの事故の価値が大きく変わる」
「大袈裟だよ」
「こいつが暴発させても特に問題ないが」
「どういう意味だ」
「私が暴発させたのなれば面目が立たん」
また始まる。呆れた溜め息。
くだらない、くだらないが、くだらないとは言わせない。
「始めから考え直してみろ。同じものを同じように調合していたのだぞ。失敗したのなら同時に失敗するはずだ」
「火薬は少量配合を間違えるだけで失敗すると偉そうに言っていたのはどこのどいつだ」
「どこのどいつだ、それは」
「とぼけるな」
「兎に角、私ではない」
「俺でもない!」
認めろよ!!!
どうでもいいが、素直に謝れない関係が好きです。サスダテとかそうだよね。
「兵助は綾部と仲いいよな」
前もって用意をされていたような質問の仕方だった。そういえばそうだな、と返事をしておく。
「それがどうしたんだ?」
「いや、ちょっと意外」
普通にそう言うものだから、何だそれと笑ってみた。綾部に大層失礼じゃないか。
それとも自分に言われたのかそれは。
「俺が話し掛けても偶に無視するぞあいつ」
「忙しかったんじゃないか」
「穴掘るのに?」
つまりは、どうして仲がいいのか、何故何どうやって仲がよくなったのかと聞きたいに違いない。
さてどう答えたものか。特に切欠があったようには覚えがないが、
「あ」
「何?」
「確か、部品が綺麗だって、この間」
どうやら難易度が跳ね上がったらしい。
目鼻顔立ち整理整頓
パーフェクトスターパーフェクトスタイル。綾部がそういう感じで人を見てたら面白いなと思っただけです。
結構前に考えてたネタ掘り返し